研究課題/領域番号 |
12J03013
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 昇平 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | エスニシティ / エスニシティ |
研究概要 |
本研究では、17世紀から20世紀初頭までに、異質な民族的出自をもつ人びとのクレオール化によって生成したインドネシア、ジャカルタの「バタヴィア先住民」ブタウィBetawiを取り上げる。このエスニシティを対象にした本研究の目的の第一は、当該エスニシティが経験した歴史的経緯と、現代インドネシア社会における人々の生活に注目してこのエスニシティを分析することによって、「民族」という本源的な帰属意識がどのように構築されるのか、その生成変容過程を、日常生活レベルにまで踏み込んで詳細に明らかにし、結果として、本質主義的視点と構築主義的視点を総合する、歴史生成的生活論の視点にもとづくモデルを提唱することである。本研究の具体的な調査は、歴史的研究と、社会学的・民族誌的研究の二つからなる。まず、平成24年度を通して、修士論文以来継続している、ブタウィの歴史研究を行ってきた。この調査ではこれまで、インドネシア、日本を中心として資料収集を行うとともに、インドネシア大学のZeffry Alkatiri氏をはじめ、インドネシアにおいてブタウィ研究に携わっておられる研究者からご教示を頂くとともに、議論を深めてきた。フィールド調査に関して、平成24年度はまず、FBR(ブタウィ人統一フォーラム)という、2001年に自警団から発足した大規模な民族的政治組織を中心としたブタウィのいくつかの民族組織の歴史と活動、およびメンバー構成といった制度的な全体像を把握することに努め、並行してFBRの中核的メンバーと周辺的メンバーに組織とエスニシティへのコミットメントの意識を中心に聞き取り調査を実施してきた。この調査は、インドネシア大学でのブタウィ研究会に参加しておられるMelani Budianta教授及び、LIPI(Indonesia Institute of Science)のWahyudi Akmaliah Muhammad氏に連携・指導して頂く事により行ってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度後半に行った現地調査の成果を論文の形で公にすることはできなかったが、調査対象地域の人々との密な人間関係を前提としなければ遂行できないような種類の調査をかなり早い段階で実行に移すことができているため。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、前年度の社会組織における調査を継続し、より詳細で包括的なものにしていくと同時に、ブタウィ・エスニシティの成員個人へのインタビュー調査をより本格化させる。また、彼らが日常生活レベルにおいてどのようにエスニックな帰属意識を表象し、どのようにエスニックな組織や活動に参加していくのかをより詳細に理解するために、彼らとともに生活しながらの参与観察を通した民族誌的調査を行う。この調査は平成25年度に合せて6ヶ月を予定している。
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