研究課題/領域番号 |
12J03020
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
菊繁 吉謙 九州大学, 大学病院・遺伝子細胞療法部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 骨髄異形成症候群 / TIM-3 / 白血病幹細胞 |
研究概要 |
骨髄異形成症候群(Myelodysplastic syndrome:MDS)は、造血幹細胞レベルで獲得された遺伝子異常群に起因する無効造血、および分化障害による血球形態異常を特徴とする。申請者は本年度、慢性骨髄増殖性疾患の中でもこのMDSに着目して研究を遂行した。申請者は、急性骨髄性白血病(AML)において、白血病幹細胞に特異的に高発現する分子TIM-3を同定し、TIM-3を標的としたモノクローナル抗体治療により、in vivoでヒトAML白血病幹細胞の根絶が可能であることを報告している(Kikushige et.al,Cell Stem Cell 7,2010)。申請者は、AML特異的表面抗原TIM-3が、前白血病状態であるMDSにおいても、MDSの異常造血幹細胞を識別する有効なマーカーになる可能性を考えた。そこで、申請者は、多数のMDS症例において、その病期別に、CD34陽性CD38陰性造血幹細胞分画のTIM-3発現を解析した。TIM-3陽性細胞は、芽球の増加していない多血球系異形成を伴う不応性血球減少(Refractory cytopenia with multilineage dysplasia:RCMD)では、CD34陽性CD38陰性分画に一部のみ存在している。芽球の増加、すなわち、MDSの病期進行に伴い、CD34陽性CD38陰性幹細胞分画内でTIM-3陽性異常細胞の割合が増加し、急性骨髄性白血病に移行すると、幹細胞分画はTIM-3陽性の白血病幹細胞で完全に占められていた。以上から、MDSの病期進行に伴って、TIM-3陽性細胞が、造血幹細胞分画に出現することが考えられ、MDSにおける腫瘍性幹細胞がTIM-3を用いることで分rにできる可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は、自身の同定したTIM-3をマーカーとして用いることにより、従来、表面抗原による純化困難であった慢性骨髄増殖性疾患における異常な腫瘍性幹細胞候補分画の絞り込みに成功しています。従って、当初の研究計画の予定通りに達成できており、おおむね順調に経過していると考えます。
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今後の研究の推進方策 |
まず、MDS以外の慢性骨髄増殖性疾患における幹細胞分画のTIM-3発現の検討を多くの症例で行う。 現時点での我々の検討では、AMLのみならず、多くの骨髄系腫瘍のCD34陽性CD38陰性の白血病幹細胞分画において、TIM-3陽性異常幹細胞の増加を認めている。すなわち、TIM-3はAMLのみならず、多くの骨髄系悪性腫瘍においても有効な治療標的分子となる可能性を示唆している。解析対象症例を増やし、TIM-3陽性異常造血幹細胞を純化し、マイクロアレイや次世代シーケンサーを用いてin vitroでの解析を行い、その生物学的特徴を明らかにする。
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