研究課題
本課題は、培養技術を駆使し、深海底熱水活動域に生息する特異な微生物の分離、生態学的研究、および地球環境修復への応用展開を目的としている。2013年度は、昨年度集中的に実施した、深海底熱水活動域に普遍的に棲息する化学合成独立栄養細菌(Aquificales目 Persephonella属)群集の、各熱水活動域でみられる遺伝型および表現型の異質性に関する研究を国際紙に発表した。さらに、独立行政法人海洋研究開発機構が実施した中部沖縄トラフ内の熱水活動域調査に参加した。本航海中に新たに発見された熱水噴出サイト由来の試料を取得し、これらから既に30株以上の微生物の分離培養に成功している。本分離株は、今後の熱水活動域に生息する化学合成独立栄養細菌の遺伝型の多様性に関する研究に用いる予定である。また、これまでに取得した分離株のうち、新規性の高い微生物株の性状解析を行った。具体的には、インド洋中央海嶺由来の化学合成独立栄養細菌を分離培養し、DNA分析(G+C含量、DNA相同試験、塩基配列比較)、表現形質(生理・生化学的性状)、化学分類指標(キノン分子種、脂肪酸分析)を決定した。その結果、本菌株の増殖至適温度範囲では、これまでに報告例のないエネルギー基質の組み合わせ(水素酸化-チオ硫酸還元)で増殖することを突き止めた。さらに本分離株は、aggregate構造をつくる微生物であることを明らかにした。なお本研究に関する情報をまとめ、微生物分類学分野の著名学術誌IJSEMへ投稿する準備を整えている。
3: やや遅れている
N_2O無害化法に必要不可欠なN_2O還元細菌の純粋株を取得したものの、それらの詳細なの性状を決定することができていないため。しかしながら、熱水活動域に普遍的に棲息する難培養性微生物集団の生物地理を解明し、国際紙に発表した点は評価できる。
深海底熱水活動域由来の特異微生物集団の分布パターンや種分化、分散の歴史の解明に関しては、2013年度末に取得した沖縄トラフ新規熱水サイト由来の微生物株の遺伝子情報を取得し、他の海域(南部マリアナトラフ、沖縄トラフ、大西洋中央海嶺、インド洋中央海嶺)由来の微生物群集から得られた結果と比較する。これにより、異なる熱水活動システム間での微生物集団の分布パターンや、集団が構成された歴史の推定が可能となる。また、N_2O無害化法に必要なN_2O還元細菌群集に関しては、純粋株の取得に成功したため、性状解析およびN_2O還元時に活性化する遺伝子の特定および発現定量、ガス消費量の測定を予定している。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Frontiers in Microbiology
巻: Volume 4, Article 107 ページ: 1-12
10.3389/fmicb.2013.0017