研究概要 |
本年度の研究について、我々はまず、AGT対応という四次元超対称ゲージ理論の分配関数と二次元共形場理論の多点関数の間にある非自明な対応関係について、前年度までの研究を更に推し進めるために新たに興味深い状況を考えた。四次元超対称ゲージ理論の分配関数というのは、その四次元超対称ゲージ理論を構成するコンパクト多様体の情報を反映する。我々は前年度、四次元楕円体という、四次元球面にパラメーターつぶんの一般化変形を行ったものに関して、その上に超対称ゲージ理論を構成し、その分配関数を求める方法を考案したのであった。今年度はその、四次元楕円体を変形する新たなパラメータに極端な値を用い、その上の理論の分配関数を計算し、AGT対応での対応の様子を確認した。このAGT対応では、対応する二つの量が、いずれも摂動的な形でしか計算されず、関数としての一致を見ることが難しかったのに対し、我々が新たに考えたこの状況では、その摂動的な式が簡単かつ厳密な式が求められ、それらの厳密な一致も容易に確認できるのである。AGT対応は、M5ブレーンというM理論の基本構成要素の一つであるものが表す六次元N=(2,0)理論というあまり詳しく知られていない理論について、そのコンパクト化に於ける二つの極限の取り方として説明されている。逆に、AGT対応が、六次元N=(2,0)理論の性質を調べる一つの手段であり、我々の結果のように、AGT対応自体を詳しく調べることは、将来的に六次元N=(2,0)理論の研究に関する指針を与えることにも繋がるものである。なお、この結果は国内外の研究者に注目されるところとなり、国際会議での講演や、研究室での招待講演を行っている。
|