研究課題/領域番号 |
12J03099
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
尾木野 弘実 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | アーキア / DNA複製 / レプリソーム / DNAヘリカーゼ / タンパク質間相互作用 |
研究概要 |
好熱性アーキアThermoplasma acidophilum由来のMCMヘリカーゼ、GINS、複製起点認識タンパク質Cdc6-2を用いたゲルシフトアッセイによって、三者が一本鎖DNA上で複合体を形成することを明らかにした。これは、アーキアにおいて複製起点認識タンパク質とヘリカーゼ複合体がin vitroで直接相互作用していることを示す初めての例である。さらに、MCMのヘリカーゼ活性がGINS、Cdc6-2によって促進されることに加えて、この両方が存在すると相乗的に活性化されるという結果が得られた。現在までにこのような促進効果を示した例はなく、T.acidophiliumにおけるヘリカーゼ活性化のメカニズムが分岐進化していることが予想される。 真核生物において、複製ヘリカーゼにとってはCdc45-MCM-GINS(CMG)複合体形成が重要であることが分かって来た。アーキアにはCdc45に相当するタンパク質が見つからず、(CMG)複合体が存在するのかどうか疑問であったが、2011年に詳細な配列比較解析の結果、アーキアに広く保存されているRecJが真核生物のCdc45と相同性を有することが報告された。 そのため、RecJがアーキアにおいてヘリカーゼの一部としてDNA複製に関わることを予想して、RecJについて優先的に解析を行うことにし、T.acidophilum由来Gins51、RecJタンパク質を大腸菌内で共産生させたところ、両者が強く結合していることがわかった。他のアーキア由来のホモログの結果と合わせると、GINS-Cdc45MecJの相互作用が幅広い生物で保存されており、生体内で機能していることが考えられる。しかしながら、真核生物のCMG複合体内のGINS-Cdc45とは異なり、GINS-RecJ複合体内のモル比が1:1ではなさそうであり、ヘリカーゼ複合体は必ずしもアーキアと真核生物で保存されているとは考えにくい。今後は等温滴定型カロリメーター解析および電子顕微鏡観察を行うことにより、MCM-GINS-RecJ複合体内の各因子のモル比を決定する。さらに、未だ明らかになっていないアーキア/真核型のヘリカーゼ複合体の詳細な構造を、X線結晶構造解析によって原子レベルで決定することを試みる。また、複製ヘリカーゼ関連タンパク質にリン酸化などの翻訳後修飾が生じているかどうかを、対数増殖期、定常期の細胞を用いて調べると共に、それらとヘリカーゼ活性化メカニズムへの関わりを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度調製を試みたリコンビナントタンパク質はいずれも高純度、多量に精製できており、今後の機能、構造解析には十分な準備が出来ている。 MCM、GINS、Cdc6-2の3者複合体の解析に関して現在論文投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
RecJがアーキアにおいてヘリカーゼ複合体の一部として機能するかどうかを明らかにする。そのために、Thermococcus kodakarensisのrecJ遺伝子の欠損株の作製を試みることにより、DNA複製に必須であるかどうかを判定する。さらに、MCMヘリカーゼ、GINS、RecIの3者によるヘリカーゼ複合体の再構成をリコンビナントタンパク質を用いて試み、構造解析を行う。しかしながら、比較的進化上離れた他のアーキアにおいてrecJ遺伝子を欠損させても生育可能である報告があるため、RecJがT.kodakarensisにおいてもDNA複製に必須ではない可能性が考えられる。そのため、T.kodakarensrs細胞抽出液よりMCM.GINSを含む複合体の精製を行うことにより、複製フォークの進行に必須な因子の探索も行う。さらに、MCM、Cdc6、GINS、RecJについて細胞内で翻訳後修飾が生じているかどうかを調べる。
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