研究課題
キク属植物は日本に18種が自生し、いずれも海岸や岩場、斜面のような日当りの良い環境に生育することから紫外線や乾燥、塩などの環境に適応していると考えられる。また、厳しい環境ストレスに対し、植物は二次代謝産物のひとつであるフラボノイドを合成し、防御物質のように利用しているといわれている。本研究では多様な環境に適応した日本産キク属植物を用い、これのフラボノイドと環壕適応の関係を明らかにすることを目的としている。平成25年度は、日本では知床半島にのみ自生の知られるアキノコハマギク、および皇居にのみ生育するカモメギクなど稀少な種についてフラボノイド分析をおこなった。この結果、アキノコハマギクは品種関係のあるチシマコハマギクと同様の組成を示したことから近縁であることが明らかとなった。またカモメギクについても品種関係にあるキクタニギクと同様の組成を示した。さらに、共同研究者らによる研究から、カモメギクはキクタニギクから生じた園芸品種であることが示唆された。本研究を通じ日本産キク属植物のフラボノイド組成は種によって異なるものの、いずれの種も細胞内と表皮の上(細胞外)にフラボノイドを蓄積すること、また細胞内ではグルクロン酸のような糖を結合した物質、表皮の上では多様にメチル化した物質を合成することが共通した特徴として見られた。これらの物質はストレスによって細胞内ではカテコール型およびUV-A領域に吸収をもつ物質が増加することから抗酸化活性や紫外線の遮蔽に機能していると考えられた。また細胞外では乾燥や塩による水ストレスに対してフラボノイドが増える傾向が見られ、蒸散の抑止に機能していることが考えられた。蒸散抑止という細胞外のフラボノイドの機能については防御機構が解明されておらず、今後の課題である。
(抄録なし)
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Natural Product Communications
巻: 9 ページ: 163-164
Mem. Natl. Mus. Nat. Sci., Tokyo
巻: 49 ページ: 23-28