1. セルトリ細胞と膵島細胞の共凝集体移植 免疫抑制剤の投与を必要としない膵島移植法の開発を目指して、膵島と、免疫特権部位である精巣に存在し、免疫抑制能を有するセルトリ細胞の複合細胞凝集体を作製し、薬物誘導糖尿病マウスを用いた移植実験により、拒絶反応の抑制能を評価した。興味深いことに、中心にセルトリ細胞、外側に膵島細胞を配した当該複合細胞凝集体は、膵島、セルトリ細胞の両機能を維持し、薬物誘導糖尿病マウスの肝臓へ移植しても、免疫抑制剤の投与なしに長期に亘りその血糖値を正常に維持することに成功した。元来数千個の細胞凝集体である膵島をいったん単個細胞にした後、再度、凝集体とする様は一見不合理のように感じられるが、本研究は単個細胞から適正な機能を有する三次元組織の構築を成し得た稀有な例と言え、適正な機能発揮には組織構築が必須であると考えられるips細胞由来のインスリン分泌細胞等においても十分にその利用可能性を認めるものである。 2. 制御性T(Treg)細胞と膵島細胞の共凝集体移植 免疫抑制剤の投与を必要としない膵島移植法の開発を目指して、Treg細胞と膵島の複合細胞凝集体を作製し、薬物誘導糖尿病マウスを用いた移植実験により、免疫制御能を評価した。Treg細胞は末梢血からの分離が可能であり、細胞源の問題はない。また、免疫抑制機能に特化した細胞であり、免疫異常から生体を守っている複合細胞凝集体内において、膵島、Treg細胞は混在していたが、薬物誘導糖尿病マウスの肝臓へ移植しても、免疫抑制剤の投与なしに長期に亘りその血糖値を正常に維持することに成功した。Treg細胞は体内の免疫系を制御している細胞である。全身投与は当該均衡を崩壊させる可能性があり、本来避けたいところである。本研究は、局在化させたTreg細胞の免疫抑制活性能を示唆したものであり、新たな移植免疫治療法の第一歩と言える。
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