研究概要 |
本研究課題の開始にあたり,まず高圧チャンバ内での大気圧放電実験を行い,高圧状態や低温状態において必要な微小空間中でのプラズマ生成技術を習得した.また,超臨界二酸化炭素中でのプラズマ生成現象を詳細に観察するための時空間分解発光測定系の構築を行い,臨界点を含む高圧流体中でのプラズマ生成現象の理解を深めた.さらに,ヘリウムやアルゴンの高圧・低温下での放電開始電圧に関する実験にも参加し,低温流体を扱う技術の習得を進めるとともに媒質制御系等の改善に取り組んでいる. プラズマ内部パラメータ診断の第1歩として,低圧プラズマ診断に一般的に用いられるラングミュアプローブ法を高密度媒質中プラズマに適用するための30μm程度の微小平面プローブを作製した.粒子同士の衝突頻度が高い媒質中でのプローブ計測理論についても合わせて検討し,確かな電子密度.エネルギー計測を目指している.並行してプラズマパラメータの各種分光測定法を比較しつつ検討を進め,近赤外半導体レーザヘテロダイン干渉計による電子密度・ガス密度測定法の適用を決定した.ヘテロダイン干渉計本体,単一窓高圧チャンバ測定用の偏光制御反射光学系の構築は完了しており,来年度は微小プラズマ測定用の顕微分光系構築とプラズマ計測実験を行う.これらの研究により,従来未解明であった大気圧以上の高密度媒質中でのプラズマ密度の時空間分布が明らかになり,また放電による媒質密度の変化も同時に測定可能であることから,超高密度媒質中放電プラズマ現象全体の理解に大きく寄与することができると期待している. 前年度まで京都大学において実験を行ってきた大気圧プラズマプロセスや光周波数コムを用いた新規レーザ分光法についての考察を深め,雑誌論文や学会発表を行った.本研究課題にも関連が深い内容の研究成果であり,今後の研究を進めていく上で重要な知見が得られている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究目的に沿った内容を進められており,各テーマの進展もおおむね順調と考えております.特に,昨年度以前より寺嶋研究室において進められてきた超高密度媒質中での放電現象の基礎研究について,当研究員が持つプラズマ分光診断の知識との融合から新しい研究結果が得られており,学会発表や論文による成果発表が進んでいます.来年度は研究員自身が準備を進めてきたプローブ計測,レーザ分光計測の実験に集中し,プラズマ診断,結果の考察,外部への研究発表まで本研究課題が大きく進展することを目標に取り組みます.
|
今後の研究の推進方策 |
現在,本研究課題は当初の計画通りおおむね順調に進展していると考えており,研究計画を大きく変更する必要はない.来年度は超高密度媒質中に生成されたプラズマ中の電子密度をプローブやレーザ分光法を用いて決定するという重要な研究段階を行う予定になっており,まずはこれらの計測実験に集中して取り組む,その後,年度後半には実験結果の考察から明らかになるプラズマ密度サイズなどから本研究のもう一つの柱である微小なプラズマによる新しい光機能の発現可能性について検討を進める予定であり,発現可能性が高い光物性やそのために必要なパラメータを持つプラズマの生成方法について考察を行う.
|