研究概要 |
本年度の研究成果は,推定精度の評価関数を12-ノルムにより定義することでサンプリングによる推定の良し悪しを適切に評価可能であることを示すとともに,その評価関数を利用することでサンプリングタイミングに与えるべき最適な揺らぎ量を計測対象過程の特性に対応して解析的に特定する手法を確立したことである. 本手法では,計測対象過程の自己共分散関数から理論的に推定精度の分布を算出することにより,分布形状と計測対象過程の自己共分散関数との関係が明らかにし,計測対象過程の自己共分散関数から最適な揺らぎ量を導出する. つまり,計測対象の特性を表すパラメータ(自己共分散関数)から最適な揺らぎ量を特定することができるため,様々な特性を持つ計測対象に対して,最適なサンプリングを行うことができる. 本研究の目的は,時間的・空間的広がりを持つ対象の一部をサンプリングによって取り出すことにより,全体の平均的特性を推定する際のサンプリングの最適化に取り組むことであったが,本手法の確立により,推定精度の平均的良さのみならず,サンプルパスのバイアスによる推定精度のばらつきも同時に考慮して,最適なサンプリング方法を特定することが可能となっている. 本手法は,active計測と呼ばれるネットワーク計測技術の枠組みの中で,試験パケットの送信タイミングの最適化として応用可能であり,簡単なシミュレーションにより手法の妥当性を検証した.
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今後の研究の推進方策 |
上記までの研究により,推定精度の分布と計測対象過程の自己共分散関数の関係は明らかになるが,この自己共分散関数は一般に未知であるため,本年度の後半についてはこれを推定する方法に着手する. また,active計測だけでなく,passive計測を始めとするactive計測以外のサンプリングを行う対象に対しても拡張可能であることを示す.
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