研究課題/領域番号 |
12J03225
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
友岡 真秀 東京藝術大学, 大学院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | パラッツォ・ヴェッキオ / アンマンナーティ / ユノの泉 / コジモ・バルトリ / ヴィンチェンツォ・デ・ロッシ / ヘラクレスの十二功業 |
研究概要 |
フィレンツェ公爵コジモ1世[在位1537-74]が1540年より展開したパラッツォ・ヴェッキオ改築事業においてコジモの威信を示す公的空間として整備された大広間に焦点をあて、その室内装飾の一環で着手されたバルトロメオ・アンマンナーティによる《ユノの泉》、および現在同室内に置かれているヴィンチェンツオ・デ・ロッシによる「ヘラクレスの十二功業」に取材した彫像群を研究対象とした。 《ユノの泉》は、1565年のフランチェスコ1世とジョヴァンナ・ダウストリアとの結婚祝祭にむけて1550年代末より企図され、その図像プログラムの構想については先行研究において人文主義者コジモ・バルトリの介在の可能性が指摘されてきたが、それを示す具体的な根拠は提示されてこなかった。これに対して本研究では、バルトリがイタリア俗語に翻訳したアルベルティの『建築論』第十書第三章に、《ユノの泉》の図像を解説した一次史料の書簡に記された意味解釈と合致する一節を見いだしたことで、バルトリが図像助言者として《ユノの泉》の構想に関与していたことを示す文献的根拠とする新知見を得た。また、これと関連して同時期にフィレンツェで制作が進められていた庭園における彫刻装飾においても同じくバルトリが図像を提供していたことを示す状況を明らかにした。デ・ロッシのヘラクレスの彫像連作については1561年初頭より着手されたとみられるが、その委嘱の状況は明らかではない。したがって本研究では、当該連作の本来的な構想を示すものと指摘されている素描群およびデ・ロッシに関する現存する一次史料の精査に取り組んだ。 研究の意義としては、公的な委嘱として制作された彫刻群の意味解釈をめぐり、その構想段階における彫刻家と図像助言者との具体的な関係性を明らかにすることで、作品に投影されたコジモ1世による文化政策の理念の読解に貢献した点を挙げることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デ・ロッシによるヘラクレスの彫像連作については、図像助言者として人文主義者ヴィンチェンツォ・ボルギーニの部分的な関与が指摘されてはいるものの実証的根拠を欠いているため、その精査に取り組んだが、現段階で新知見たりうる有力な根拠は得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
コジモ1世が推進した文化政策の理念を具体的に明らかにするため、公的な委嘱に基づく複数の彫刻作品の委嘱の状況および作品の構想段階をケーススタディとして継続的に検討する。その際、とくに図像助言者の介在の可能性を前提として調査を進めるものとする。
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