研究課題/領域番号 |
12J03234
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
中込 滋樹 統計数理研究所, リスク解析戦略研究センター, 特別研究員(PD)
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キーワード | クローン病 / Kernel ABC / 口腔内細菌叢 / TNFSF15劣性効果 |
研究概要 |
本研究では、「疾患」を「進化学的」に捉える進化医学的アプローチを実践し、「疾患が人類集団に存在する理由」を明らかにすることを目指している。そこで、多因子疾患の1つである「クローン病」に着目し、「日本人においてクローン病が生じた理由」を明らかにすることを目指している。本年度は以下2つの研究を行った。 (i)Kernel approximate Bayesian computationを用いた進化史の推定 DNA配列のデータから過去の歴史(例 : 集団の大きさや集団の分岐時期、分岐パターン)を推定する方法として、「kernel approximate Bayesian computation (kernelABC)」を開発し、野生動物のゲノムデータ解析に適用した。KernelABCとは、「高次元データを解析する上で有効な統計学手法の1つであるカーネル法」と「ベイズ推論の枠組みで近似的にパラメーターの事後推定値を計算するための方法であるABC」を組み合わせた方法である。それにより、「東南アジアに生息するカニクイザル集団の分岐時期、集団の大きさの推定」、「ヒグマとホッキョクグマの進化モデルの構築」を行った。 (ii)日本人におけるクローン病の造伝要因と環境要因の相互作用の検証 本年度は、クローン病の発症における遣伝要因と環境要因の相互作用を明らかにする。環境要因の1つとして、腸内細菌叢が発症に関係する。本研究では、腸内細菌叢と組成が類似していることが示されている口腔内細菌叢に着目し、遺伝要因の1っであるTNFSF15と口腔内細菌叢の相互作用を検証した。その結果、クローン病患者と健常者では口腔内細菌叢が有意に異なることが示された。さらに、「TNFSF15の劣性効果」と「細菌門の1つBacteroidetesの増加」に強い相関関係が示され、それによりクローン病の発症リスクが高まっていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、過去の歴史を推定するために開発した新たな統計学的方法を実際のデータ解析に適用し、その有効性を実証した。さらに、クローン病の発症に遺伝要因と環境要因の相互作用が関係することを明らかにした。以上の成果から、上記の評価とする。
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今後の研究の推進方策 |
日本人に特異的なクローン病原因遺伝子を同定し、TNFSF15を含め日本人においてクローン病アレルが拡がった進化史を推定する。さらに複数のクローン病原因遺伝子と現代における環境要因との相互作用を調べることにより、日本人においてクローン病が生じた理由を明らかにする。
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