研究課題/領域番号 |
12J03239
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関口 玲生 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 節足動物 / チオエステル含有タンパク質 / C3 / A2M / iTEP / 進化 |
研究概要 |
前口動物に属する節足動物の補体遺伝子の進化について、研究を行った。本研究では、鋏角類ウミグモ綱に属するシマウミグモ(Ammothea hilgendorfi)、多足類ムカデ綱に属するアオズムカデ(Scolopemdra subspinipes)、甲殻類顎脚綱に属するフグウオジラミ(Caligus fugu)についてc3を含むチオエステル含有タンパク質(TEP)遺伝子の有無を、縮退プライマーを用いたRT-PCRと網羅的クローニングによって調べ、各遺伝子のコーディング領域の全配列を決定し、得られた配列を用いて系統樹を作製し節足動物門内のC3およびその他のTEP遺伝子の進化の一部を明らかにした。シマウミグモにC3遺伝子1種類とA2M遺伝子3種類、アオズムカデにc3遺伝子とA2M遺伝子1種類ずつとiTEP遺伝子2種類、フグウオジラミにC3遺伝子1種類とA2M遺伝子3種類が存在することが明らかになった。先行研究により鋏角類に属するカブトガニ綱とクモ綱でC3遺伝子の存在が確認されていることと併せて、鋏角類内の全ての綱でC3遺伝子が確認されたことになる。また修士課程での先行研究で、多足類ヤスデ綱に属するマクラギヤスデ(Niponia nodulosa)にC3遺伝子が存在しないことが明らかになっており、多足類内でムカデ綱との分岐時にヤスデ綱の共通祖先でC3遺伝子が失われたと考えられる。また、甲殻類でC3遺伝子の存在が報告されておらず、フグウオジラミが初めての例となった。このフグウオジラミC3は魚類のC3遺伝子と約70%の類似性が見られた。節足動物と魚類のC3遺伝子がこのような高い類似性を示す例はなく、フグウオジラミのC3遺伝子が特異な進化をしていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、節足動物以外の前口動物に属する動物種に対しても補体遺伝子の探索を行う予定が、未だに着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
シマワミクモ、アオスムカテ、フグウオジラミに補体遺伝子C3が存在することが判明したので、これらの動物がMASP、factorB遺伝子を持っているかをPCRを用いて単離し、各遺伝子の一次構造を決定する。また、系統樹解析によってC3、MASP、factorB遺伝子の動物種間の系統関係および進化を明らかにする。
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