研究課題/領域番号 |
12J03239
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関口 玲生 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 補体系 / チオエステル含有タンパク質 / 節足動物 / 進化 |
研究実績の概要 |
前口動物に属する節足動物の補体系の進化を明らかにすることを目的とした。今年度は甲殻類のウオジラミ三種(フグウオジラミ、アイゴウオジラミ、サメジラミ)を解析対象として、補体C3を含むチオエステル含有タンパク質(TEP)遺伝子の網羅的なクローニングを、縮退プライマーを用いて行った。その結果、全てのウオジラミ種から魚類のC3とアミノ酸配列で約70%のアイデンティティーを持つC3配列が単離できた。これらウオジラミC3は節足動物のC3とアミノ酸で20~30%程度のアイデンティティーしか示さなかった。ウオジラミは魚類の外部寄生生物であり、C3遺伝子を魚類から水平伝播で獲得したことが示唆された。ウオジラミC3間のアミノ酸配列でのアイデンティティーも約70%であり、非常に古い時代に魚類からウオジラミへのC3遺伝子の水平伝播が起こったことが考えられる。一方、C3同じTEPファミリーのα2マクログロブリン(A2M)も単離できたが、節足と30~40%程度のアイデンティティーであり、節足動物型のA2Mであった。このことから、TEP遺伝子の水平伝播はC3特異的に起こっていることが示唆された。本研究により、節足動物の補体遺伝子の進化の一部ご明らかになった。節足動物内においてC3遺伝子は多足類のムカデ綱とヤスデ綱が分岐した後にヤスデ綱の共通祖先と、汎甲殻類の共通祖先の少なくとも二回、独立に喪失したことが明らかになった。また、ウオジラミ種は魚類から水平伝播によりC3遺伝子を獲得した可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに補体系遺伝子についての知見がなかった甲殻類のウオジラミ種について、C3を含むTEPの網羅的クローニングを行いC3とA2M遺伝子の全長配列が決定できたため。
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今後の研究の推進方策 |
解析動物種を増やすとともに、RNA-seqによりC3以外の補体系遺伝子の網羅的解析を行う予定である。
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