研究概要 |
心不全増悪因子として、心筋慢性炎症の重要性が認識されるようになっているが、急性の心筋炎症が慢性化するメカニズムに関しては、全く知られていない。そこで本研究計画の最初のステップとして、炎症の慢性化機構を理解するという最終目標を達成するために、まず、自然治癒する急性心筋炎症モデルである自己免疫性心筋炎モデル(Experimental autoimmune myocarditis, EAM)を用いて、心筋炎の自然治癒機序を解明することを目指した。EAMモデルは、臨床的にその多くが自然治癒することが知られているウイルス性心筋炎のモデルとなると考えられている実験系である。 私は、これまでEAMの発症にIL-6を介したTh17細胞の分化誘導が重要であることを報告してきた。そこで、まず、Th17/Tregバランスという観点から、EAMにおけるTreg細胞の細胞動態を検討した。その結果、Treg細胞は、Th17細胞と同様に、EAMの発症に伴って炎症をおこしている心筋組織に浸潤することを見出した。また、細胞移植の実験からTreg細胞の心筋炎への浸潤が炎症を抑制することを示した。非常に興味深いことに、Treg細胞の心筋への浸潤はTh17細胞で制御されていることを発見した。 以上の発見は、ウイルス性心筋炎の自然治癒メカニズムを説明付けるものとして重要である。今回見出した自然治癒シグナル系に破綻をきたすことが、心筋炎が心不全へと進展するメカニズムとなる可能性があり、心筋の慢性炎症研究のブレークスルーとなりうる。
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