研究課題/領域番号 |
12J03320
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
榎戸 輝揚 独立行政法人理化学研究所, 玉川高エネルギー宇宙物理研究室, 特別研究員(SPD)
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キーワード | マグネター / 中性子星 / X線衛星 |
研究概要 |
本研究は「銀河系内に次々と見つかっている特異なX線パルサーが、通常の中性子星の磁場を2桁以上も上回る超強磁場を持ち、磁気活動で輝く天体である」というマグネター仮説を検証し、強磁場の物理現象を突き止めることである。本年度は、X線天文衛星「すざく」を用い、マグネターIE 1547.0-5408で発生したバースト現象のスペクトル解析を行ったところ、微弱なバーストを重ね合わせたX線スペクトルが定常X線に類似する兆候を確認できた。これは、マグネターの定常放射が微弱なバーストの重ね合わせの可能性も示唆し、マグネター内で多数発生する星の地震(星震)で磁場エネルギーが解放され星表面でバースト現象になっている可能性も示唆している。今後Swift衛星などの解析も進める。また、本年度は精力的に研究会、シンポジウムに参加した。インドで開催されたCOSPAR会議、韓国のAPCTP会議、国内では京都大学、高エネルギー加速器研究機構などでの招待講演を行い、関連する研究者との議論を進めた。また、中性子星の内部物理に関する大家である柴崎徳明教授の退官を記念する立教大学のシンポジウム「Current Understanding and Future Study of Magnetars」で科学面の実行委員(SOC)の一員を担当した。さらに、理化学研究所の博士学生のマグネター1E 1547.0-5408の2回目の公募観測のデータ解析に協力し投稿論文にまとめた。将来ミッションとしてX線偏光のチームにも本年度から参加し、NASAゴダード宇宙飛行センターでの長期滞在も実施し、検出器に使用するガス圧に代表される各種パラメータを最適化するためのツールなどを作成し、次期ロケット実験の公募提案に貢献した。また、2013年4月に予定されているブルックヘブン国立研究所での検出器の性能試験や次期ロケット実験の研究提案に向けた実験にも参加している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米国を中心に開発されてきたX線偏光専門の観測衛星GEMSが予算の関係から中止になり、日米協力のもと再提案に移行するなど、当初の将来計画には変更を余儀なくされる箇所も出てきたものの、一方で既存の「すざく」衛星等のデータ解析は順調に展開し、本年度はMNRAS誌に論文を1本発表するとともに、X線パルスを用いてマグネター内部に閉じ込められたトロイダル磁場を検証する方法を開拓するなどの予期せぬ進捗を得た。
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今後の研究の推進方策 |
X線偏光観測衛星の計画を余儀なくされたものの、検出器開発は依然として進行しており、4月に行われる予定のビーム試験において検出器の動作を確認し、今後のロケット試験と衛星再提案を速やかに進めるための科学的結果を蓄積する予定である。一方で、「すざく」衛星のデータ解析は米国のSwift衛星のデータ解析と合わせて進行しており、本年度中に「すざく」衛星のマグネター観測に関するまとめ論文を執筆、発表する予定である。これは次期X線天文衛星ASTRO・Hの観測提案にむけての重要な遺産になると考えている。一方で、X線パルスを用いたトロイダル磁場推定の方法の構築が進んでおり、マグネターの質量、磁場、半径といった基礎的な物理量を調べる予期しない方法が得られる可能性があり、理論的、データ解析などを含めた総合的な展開を進める。
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