研究課題/領域番号 |
12J03324
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
堺 正太朗 北海道大学, 大学院・理学院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 土星系 / ダスト-プラズマ相互作用 / 磁気圏-電離圏結合 / カッシーニ / エンセラダス / プリューム |
研究概要 |
土星内部磁気圏におけるダスト-プラズマ相互作用について,過去の観測結果に基づきイオンが共回転速度から遅れる原因を数値計算を用いて調べた.イオン速度はダスト密度が大きい,あるいはダスト層の厚さが厚い時に減少することを明らかにした.ダスト密度もしくはダスト層の厚さが厚いとイオン-ダストの衝突が増加し,電流が流れ磁気圏内に新たな電場が発生する.この電場が磁気圏内に存在する共回転電場を小さくすることでイオン速度を遅くする,観測に一致するためにはダストの最大密度が10^5m^<-3>以上,ダスト層の厚さが1R_s(土星半径)以上必要であることを明らかにした.重要な点は,荷電ダストが磁気圏内に存在すると新たな電場が生成され磁気圏プラズマに影響を与えることである.これらはダストが存在する木星系への適用も可能になる.これらの成果を雑誌Planet. Space Sci.へ投稿し今年1月に出版された. カッシーニ・ラングミュアプローブのデータ解析も行った.エンセラダスプリュームが内部磁気圏にどのように広がり分布しているかをきちんと理解することも重要である.本研究ではプリュームを横切る軌道を用いてプリューム特性を調査した.電子密度とイオン密度の比はエンセラダスに近いプリューム内で約0.001であった.ここから推定されるダスト密度はダスト最小半径が10nmの時100cm^<-3>以上,最小半径が100nmの時10cm^<-3>以上存在する.ダスト電位は一般的に負の電位なのだがエンセラダスに近い領域では正の電位となる部分が存在した、ダスト電荷がエンセラダスから放出された直後で定常状態に達していないためと考えられる.プリュームサイズは水平方向はエンセラダス近辺で2R_E(エンセラダス半径)程度,遠い領域では6R_E程度であった.鉛直方向は12R_E以上広がっている.これらの成果はまもなく論文投稿予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で,土星系で生じているダスト-プラズマ相互作用の大まかな描像が捉えられてきた.研究実績の概要でも述べた通り,イオンがダストと衝突することにより磁気圏内に電流が流れイオンの運動を変えるというのは大きな成果である.今後は細かいパラメータを詰めていくことになる.データ解析からプリューム内のイオン分布やダスト分布などを求めた.この結果を今後行う予定である数値計算に取り込む予定である.また同時に,土星電離圏との相互作用も考えた2次元モデルも構築中で,電離圏伝導度がどのように内部磁気圏プラズマに影響を与えているかを調べている.こちらも現在投稿準備中である.これらの結果からは概ね順調に研究を進められていると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後はデータ解析をできるだけ早い時期に終わらせ,次の段階であるエンセラダスプリュームダイナミクスの数値計算を行う予定である.この数値計算は3次元的にプリュームの特性を捉え,またそのプリュームがどのように磁気圏内に広がっているのかまで計算を行う予定である.初めはプリュームのシミュレーションから行い,その特性を理解した上で次の段階であるプリューム起源のダストやプラズマがどのように磁気圏内に広がっていくかを,磁気圏背景プラズマとの相互作用も踏まえ検証していく予定である.研究代表者は現在スウェーデンにあるSwedish Institute of Space Physics(IRF),Uppsalaに長期滞在中で,これらの数値計算はIRFやウプサラ大学と連携して行う予定である.
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