研究課題/領域番号 |
12J03334
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
樋口 麻衣子 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | ヒトiPS細胞 / 肝細胞 / 分化誘導法 / 三次元培養 |
研究概要 |
ヒト人工多能性肝細胞(iPS細胞)は、肝細胞等のあらゆる細胞に分化することから、再生医療への応用や、薬物のin vitro毒性スクリーニング系に応用することが期待されている。ヒトiPS細胞から高効率かつ高機能な成熟肝細胞を分化誘導可能な方法を確立するために、生体内肝臓環境をin vitroで模倣した分化培養系の構築、具体的には、肝発生時に隣接している細胞および肝組織構成細胞との共培養が可能な三次元分化培養系の確立を目指し、研究を遂行した。三次元培養法が種々存在する中で、共培養細胞とiPS細胞由来分化誘導細胞との隣接面積が高く、且つ細胞と足場素材との相互作用を極力無視できるといった点から集積培養法に着目した。この方法は、細胞1個1個の表面にフィブロネクチン-ゼラチン薄膜を形成させることにより、細胞間の接着足場を提供し、細胞を垂直方向に積層化できる三次元培養法である。本手法をiPS細胞から肝細胞への分化誘導培養時に適応するため、種々の条件検討を行った。iPS細胞から肝幹/前駆細胞を従来の単層状態で分化誘導後、細胞を剥離し、細胞へ薄膜コーティングを行った。細胞生存率および機能を維持しながら、薄膜を形成可能な条件の最適化を行った。これら細胞をセルインサートに播種することで、三次元体を形成させた後、肝細胞への成熟化を行った。その結果、単層で成熟化した系に比べ、アルブミンや薬物代謝酵素の発現量が約1.5倍に上昇した。 さらに、体細胞からiPS細胞を経ず、直接的に肝細胞への分化誘導可能な手法の開発についても検討を行った。直接的肝分化を誘導する遺伝子を探索するに当たって、公開マイクロアレイデータを用い、肝幹前駆細胞や肝細胞等で高発現している遺伝子や肝発生過程において必須との報告がある遺伝子、計30遺伝子を抽出した。それぞれの遺伝子をクローニング後、各遺伝子発現レンチウイルスベクターを作製した。今後、これらの遺伝子について、スクリーニングを行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトips細胞から肝細胞を分化誘導する過程において、集積培養法によって三次元体を構築する条件の最適化ができた。さらに、本手法にで肝細胞の成熟化を行ったところ、従来法よりも肝機能が向上する可能性が示唆された。今後さらに詳細な肝機能の評価を行っていく。また、体細胞からの直接的肝分化誘導についても、遂行途中であるが、予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度において、集積培養法で成熟化した肝細胞について、肝機能の評価がまだ不十分であるため、さらに詳細に機能評価を行う。また、三次元体の断面図の解析から、細胞一細胞間に空白ができていたり、層の形成にムラがあったため、今後更なる条件最適化をする必要があると考えている。その後、肝臓非実質細胞との共培養を行うことで、成熟化促進を狙うとともに、内胚葉から成熟肝細胞分化までの各分化過程毎に共培養細胞を変え、分化効率を評価することにより、肝発生にどの細胞がどの分化段階で影響を与えるか、を探索する。さらには、共培養細胞から分泌される肝分化を促進する液性因子の同定や、肝発生時に周辺細胞・肝非実質細胞から送られる分化・成熟を促進するシグナルを探索する。直接的分化誘導については、現在までに抽出・クローニングした肝分化誘導候補遺伝子について、繊維芽細胞に導入することにより、遺伝子スクリーニングを行う。
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