研究課題/領域番号 |
12J03363
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中山 慧 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(PD)
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キーワード | パーソナリティ / 遺伝相関 / ドーパミン作動系 |
研究概要 |
本研究の目的は、近年、進化行動生態学の分野で注目を浴びている、動物のパーソナリティの存在について、昆虫のパーソナリティをモデルにその遺伝学的・生理学的・分子生物学的特徴を明らかにすることで、パーソナリティの進化やその維持機構に対する理解を深めることを目的としている。具体的には、死んだふり(擬死)をしやすい個体ほど、普段からあまり動き回ることをしない大人しい個体であるというパーソナリティ(擬死と歩行活動性の遺伝相関)の至近メカニズムについて、コクヌストモドキ及びヒラタコクヌストモドキにおいて確立されている擬死選抜系統(L系統:刺激に対して擬死を行い、歩行活動性が低い;S系統:擬死をせず歩行活動性が高い)を材料に、遺伝・生理・分子生物学的手法を用い多角的な研究を展開している。 本年度ではまず、ドーパミン注入実験及び、脳内ドーパミン量の系統間比較実験により、ドーパミン作動系が擬死行動・歩行活動性の相関に関係していることを明らかにした(論文受理)。量的遺伝学的手法を用いた遺伝因子数の推定と伴性遺伝の有無の判定については、結果は得られたものの、それをもって明確な見解を導き出すことは難しいという判断に至った。関与が疑われる遺伝子4つについて、その発現量を系統間で比較したが、有意な差は検出されなかった。これと同時に、塩基配列の系統間比較も行う予定であったが、次世代シーケンサによってゲノム情報そのものを系統間で一元的に比較することを現在新たに検討中で、これについては来年度取り組むことに変更した。 また、本年度は以前より共同研究を行っていた英国リヴァプール大学Greg Hurst研に渡り、半年間、昆虫の母系遺伝内部共生細菌の進化に関する実験を行った。これについては、現在論文執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内容的には、当初予定していた実験の半分ほどしか消化できていないが、次世代シーケンサの利用により、より効率的で網羅的な解析の目途がたっていること、さらに、英国で行った内部共生細菌に関する実験結果が良好で、論文化の目途がおおむねたっていることなどが、この理由としてあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、今後は次世代シーケンサを用いた解析を試みることで、当初計画していたものよりもはるかに網羅的な解析を行い、効率よく研究を展開していく計画にシフトしていく。
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