研究課題/領域番号 |
12J03368
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
羽鳥 康裕 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 形状 / 視覚 / 大脳皮質 / 計算論モデル / 心理物理学 |
研究概要 |
本研究の目的は、三次元形状知覚を生み出す基礎となる神経メカニズムを明らかにすることである。本年度は、三次元形状を表現する基礎となる二次元形状に着目し、その情報処理機構を研究した。特に、図方向知覚と輪郭構造の関係および、図方向情報が形状情報処理において果たす役割を、心理実験・シミュレーション実験により検討した。 自然画像に含まれる構造と図方向知覚の関係を心理物理実験により検討した。具体的には、図方向知覚は(1)輪郭の同期性により促進され、(2)主に閉合性に基づいていることを明らかにした。自然界の構造(凸性、閉合性、平行性)を定量的に定義し、それらの特徴量に基づいて刺激セットを作成した。輪郭の同期率が異なる図方向が曖昧な刺激を呈示し、図方向知覚の同期率への依存性を測定した。その結果、高い同期率を持つ輪郭の方向に対して図方向知覚が誘導された。次に、各因子が図方向知覚に与える効果を測定したところ、被験者は主に閉合性に基づいて図方向を回答する傾向を示した。 形状情報の処理において図方向情報が果たす役割を、計算論モデルを用いたシミュレーション実験により検討した。具体的には、図方向情報は曲率選択性の生成に寄与することを示した。二次元の面表現(図方向情報)を基に、方位情報を統合するモデルを構築した。モデル細胞は曲率選択性を再現し、かつ、パラメータに依存して多様な曲率選択性を再現した。モデル細胞集団の性質を検証したところ、高い曲率に対して応答が偏っていた。これらの結果は、先行研究の結果と一致している。このことは、図方向情報が曲率選択性の実現において重要な役割を果たす可能性を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画では、心理・生理実験を実施する予定であった。心理実験は計画通りに実施が完了し、人間の図方向知覚と自然画像に含まれる構造の関係を研究することができた。生理実験は実験パラダイムの決定および、予備実験の実施が完了した。また、次年度に実施する予定であった計算論モデルの構築は、計画を前倒しして実施した。生理実験が計画より遅れているが、次年度の実験に向けた準備はほぼ完了しているため、遅れはキャッチアップできると考えている。上記を総合して、研究目的の達成度は(2)おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究はおおむね順調に進展したが、生理実験が計画よりも遅れている。しかし、予備実験の実施は完了しており、予備実験で見つかった問題点を解消した実験系の構築もほぼ完了している。次年度の早い時期に新たな実験系を用いた生理実験を実施し、データ解析・検討の時間を十分取れるようにする。 次年度での研究を予定している計算論モデルの構築については、本年度にその内容の一部を実施している。本年度の実施結果に基づいてモデル構築を行うことにより、研究計画を完遂する。
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