物体の形状は、大脳皮質視覚野の腹側経路において符号化・表現される。視覚野の神経表現を生成する符号化原理・神経メカニズムを検討するための計算論モデルを構築した。はじめに、V4野の神経細胞の曲率選択性を生成する符号化原理を検討した。モデルV2細胞の反応に対してスパースコーディングを適用することにより、基底関数を求めるモデルを構築した。スパース性と基底関数の関係を検討するために、スパース性の度合いが異なる基底関数群を求めた。その結果、中程度のスパース性を持つ基底関数群は曲率選択性を再現した。これは、スパース性がV4細胞の曲率選択性の生成において重要な役割を担うことを示唆する。次に、曲率選択性を実現する神経メカニズムを検討するために、昨年度に提案した局所的な方位情報(V1細胞の反応)を統合するV4モデルを修正し、再解析を実施した。統合するV1細胞に応じて、面表現が生成される場合があると仮定し、曲率選択性と面表現の関係を検討した。その結果、面表現が生成されるようにV1細胞の反応を統合するモデルV4細胞は曲率選択性を示した。これらの結果は、スパース性および皮質の階層構造に沿った情報統合が、曲率選択性の生成において重要な役割を果たすことを示唆する。 皮質では輪郭形状に加えて、中心軸を用いて物体形状を表現している。三次元形状は網膜に投影された二次元像から知覚される。そこで、二次元像の中心軸表現と両眼視差から三次元形状を表現する中心軸を求めるモデルを構築した。提案モデルは三次元形状を表現できることを示した。これは、三次元形状知覚を生成する基盤となる神経メカニズムに対する示唆を与える。
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