研究課題/領域番号 |
12J03410
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
片岡 沙織 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | G蛋白質共役型受容体 / pCold-GST |
研究概要 |
pCold-GST発現システムを用いて、大腸菌におけるクラスBに属するヒトGPCRの細胞外ドメインの試料調製技術の開発を行った。 研究対象としたのは、クラスBに属するGPCRの内、9種類の受容体のN末端細胞外ドメインである。大腸菌可溶性蛋白質発現システムであるpCold-GSTを用いることで、クラスBに属する受容体9種類中7種のN末端細胞外ドメインを、可溶性画分で発現させることに成功した。そこで、可溶性画分で発現が確認された受容体を対象として、機能構造を保持した状態の蛋白質を得る精製法の開発を行った。 pCold-GST大腸菌発現システムでは、GST融合蛋白質として発現するため、GSTタグを用いた簡便な精製法の確立を行った。まず、可溶性画分で発現が確認できた蛋白質の内、2種類の蛋白質について精製法の検討を行った。精製には、アフェニティーカラムとしてGlutathione Sepharose 4Bレジンを使用し、効率的に目的蛋白質を回収した後、イオン交換やゲルろ過を組み合わせた精製法を確立した。その結果、最終的に、溶液NMR測定用のサンプルを得る事に成功した。また、クラスBに属するGPCRのN末端細外ドメインには、4つのジスルフィド結合が含まれている。そこで、Glutathione Sepharose 4Bレジンからの蛋白質溶出に使用するグルタチオンの影響による、ジスルフィド結合の掛け違いを防ぐ為、アフェニティーカラムにNiレジンを使用する精製法の開発も行った。その結果、2種類の受容体に適用したところ、夾雑タンパク質をほとんど含まない、目的蛋白質のみを得る事に成功した。今後、他の受容体にも適用し、この精製方法を使用して、機能構造を保持した試料調製法の確立を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、大腸菌発現系pCold-GSTシステムを用いたクラスBに属するGPCR細胞外ドメインの試料調製法の開発において9種類の受容体中5種類以上の受容体に適用可能な精製法の確立を目指す、野心的な計画を立案している。当初予定よりは遅れが見られるものの、様々な検討により、一部の受容体で溶液NMRに適した試料調製法の確立に成功しつつあり、今後に期待が持てる状況にある。全体としてはpCold-GSTを用いた試料調製法の開発として高い評価を与えることができる成果を得ており、ほぼ期待通り研究が進展したと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
精製方法の確立を目指すと共に、GPCR以外の多数の蛋白質にpCold-GSTシステムを適用し、発現精製系の確立と立体構造解析も行っていく予定である。
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