昨年度、pCold-GSTシステム、クラスBに属する9種類の受容体のN末端細胞外ドメインを用いて、試料調製を行ったところ、9種類中7種のN末端細胞外ドメインを、可溶性画分で発現させることに成功した。この時、pCold-GSTシステムとシャペロンを共発現させるコンピテントセルを用いることで、可溶性画分での発現が良くなることを見出した。そこで、可溶性画分での発現に、どのシャペロンと組み合わせて発現させることが有効なのかを、検証した。結果、試したシャペロンのほぼ全てで、昨年度使用したシャペロンと同様の効果を表すことが明らかになった。また、これらの成果を論文にするために、データの精密化を行った。さらに、クラスBに属するGPCRのN末端細胞外ドメインの試料調整法の確立に留まらず、まだ立体構造が明らかになっていない他のタンパク質に、pCold-GSTシステムを適用することで、大腸菌を用いた簡便な試料調製技術の確立を行った。その結果、他のタンパク質の発現や可用性タンパク質の生産にも成功し、溶液NMRを用いて、立体構造を決定することに成功した。また、このシステムでタンパク質の発現に成功したことで、相互作用実験を行う事を可能にした。 この研究では、発現が困難であったり、可溶性タンパク質の生産が困難なタンパク質の試料調製法の確立を目的とした。結果、採用期間内で、新規大腸菌発現系システムpCold-GSTを用いて、クラスBに属するヒトGPCRの細胞外ドメインの試料調製技術の開発と、pCold-GSTシステムの有効性と、応用力の高さを明らかにすることに成功した。
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