研究概要 |
本研究では表面改質法の一種であるピーニングを用いて生体材料の高機能化を実現するため,適切なピーニングおよび処理条件の選択が必要となる.ピーニングはショットピーニング,キャビテーションピーニング(CP)およびそれらを組み合わせた複合ピーニングを想定している.特にCPはノズル出口形状,キャビテーション数,噴射圧力などの流体力学的パラメータがその処理能力に大きな影響を与える.よって第1年目度は以下の研究を行った. ノズル出口形状はキャビテーション噴流の特性を大きく変化させるので,ノズル出口形状およびキャビテーション数を変化させて壊食試験を行い,ノズル出口形状によって加工能力が最大となるキャビテーション数が異なることを明らかにした. CPはキャビテーション噴流を用いるため,処理能力は処理対象の形状に依存するので生体材料の一種のインプラントロッドを模した円柱形状の試験片側面に対し,有効なピーニングを目的とし,キャビテーション数を変化させてピーニングを行い,試験片表面に導入された残留応力を測定した.この結果,処理対象の形状に対し圧縮残留応力を導入できるキャビテーション数が存在することを明らかにした. ピーニングにより導入される圧縮残留応力は衝撃力による塑性変形,すなわちピットの生成に起因しているため,種々の衝撃力の評価方法を検討した.この結果,PVDFセンサ,AEセンサ,レーザドップラ振動計および水中マイクロホンを用いて測定したキャビテーション噴流の相対的エネルギーと加工能力の間に高い相関関係にあることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体材料の高機能化を実現する手段の一つであるキャビテーションピーニングを用いて適切に表面改質を行うために,その処理能力に影響を与えるノズル形状の影響を明らかにした.また,表面改質の効果を明らかにする手法として,キャビテーション噴流の加工能力を種々の方法を用いてモニタリングを試みて,壊食試験での加工能力との相関関係を明らかにして各手法の比較検討を行った.以上より,本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は表面改質の手法としてキャビテーションピーニングに注目したが,来年度はショットピーニングやそれらを組み合わせた複合ピーニングを用いる.複数のピーニング手法を用いて,材料の残留応力,ビッカース硬さ,押し込み深さ等の測定を行うことで材料特性に与える影響を明らかにする.特に亀裂進展試験において,単一のピーニングでは破断までの疲労回数の増加が飽和する一方で,複数の異なるピーニングを施すことでその回数がさらに増加することを踏まえ,によって表面改質による疲労強度向上のメカニズムを明らかにする.また,異なるひずみ速度を有するピーニングを用いることで,衝撃力の導入による塑性変形の機構を解明する.
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