研究課題/領域番号 |
12J03482
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
嶋津 小百合 神戸大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | PCB同族体 / 重金属 / ファイトモニタリング / バイオサーファクタント |
研究概要 |
モルモットのアリルハイドロカーボン受容体(gAhR)に由来する組換え型gAhRを介したβ-グルクロニダーゼ(GUS)レポーター遺伝子発現系を導入したダイオキシン類モニタリング用組換え体シロイヌナズナ植物を用いて、ポリ塩化ビフェニル(PCB)同族体および環境での共汚染物質である重金属のファイトモニタリングを行うことを目的に研究を実施した。PCB同族体は脂溶性が高く植物に取り込まれにくいが、これまでにバイオサーファクタントやキャリアータンパク質を利用することでモニタリングの感度を上昇させることを見出している。そこで、これらの物質をPCB同族体と重金属のモニタリングに利用した。PCB同族体高蓄積植物種であることが報告されているセイタカアワダチソウから、新規バイオサーファクタントとキャリアータンパク質の探索を行った。その結果、セイタカアワダチソウの糖脂質画分の添加によって組換え体シロイヌナズナのPCB126誘導GUS活性が上昇した。その有効成分の一つとしてステリルグルコシドに有効性を見出した。また、タンパク質抽出物も有効性を示した。このことから、セイタカアワダチソウのPCB同族体取り込み機構にバイオサーファクタントやキャリアータンパク質が関与している可能性が考えられた。 次に、PCB126添加培地における金属類の添加効果を検討したところ、Fe、CuおよびZnの添加では変化が認められなかったのに対し、CdとPbの添加で相加的なGUS誘導活性の上昇が認められた。また、CdとPbによる相加的作用は重金属の濃度に依存的であった。これまでに、酵母が生産するバイオサーファクタント・MEL-Bおよび牛血清のアルブミンがPCB126誘導GUS活性を上昇させることを見出しているが、Cdの添加で上昇したGUS活性に対しては影響を及ぼさず、これらの物質は、Cdの吸収促進効果はないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダイオキシン類モニタリング用組換え体シロイヌナズナ植物を用いて、PCB同族体および重金属のファイトモニタリングのアッセイ条件を設定し、バイオサーファクタントとキャリアータンパク質の影響を検討することができた。 また、セイタカアワダチソウからの脂質抽出物からPCB126のアッセイに有効な画分を見出し、1種類の化合物の単離・同定ができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に引き続きPCB同族体高蓄積植物種由来の新規バイオサーファクタントやキャリアータンパク質の探索と同定を行い、それらを利用して、栽培・管理の容易な植物種を用いたPCB同族体と重金属の共汚染浄化性能を比較する。さらに、それらがPCB同族体の土壌からの脱離、植物への取り込み、地上部への移行のどの過程に関与しているかを明らかにする。
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