研究課題
報告者は日中の社会関係の道具性と拡張性の違いや、そうした違いによって生みだされる関係形成におけるシグナリングへの期待の違いと日中間の信頼行動の違いとの関連を検討することを目的とする。平成24年度の研究実施では主に下記のことを行った:1.社会関係の拡張性の日中差に関する日中比較実験の予備実験の分析および本実験の準備。社会関係の日中差やそれと信頼行動の関連を調べるためのWEBベース調査に先立ち、報告者は平成24年2月に日中の大学生を対象に予備実験を実施した。予備調査では日中の間に社会関係の道具性の文化差を支持する結果が得られたほか、社会関係の拡張性のデータを蓄積することもできた。予備実験は本調査におけるの指標設定と手法について重要な情報を提供すると同時に、それ自身も重要な研究結果を生み出した。実験の結果は日本社会心理学会年次大会で報告された。2.guanxi(中国の社会関係)尺度を用いて、関東在住の日本人一般人参加者約500名を対象に測定を行った。これらの結果は日中の社会関係差を検討するためのデータの一部を構成し、データの因子構造の安定性を確認するための重要な手がかりを提供する。3.信頼行動と関連する要因としてリスク選好に関する実験室実験を行った。社会的・非社会的な場面においてのリスクの操作への反応の違いを確認した。実験結果は信頼行動を測定する際に提示するリスク選好指標についての情報を提供するものであった。4.次年度に実施する日中における実験室実験の準備作業として、実験手順とマテリアルの作成・翻訳・確認作業を行った。また、上海の復旦大学の共同研究者との研究打ち合わせを重ね、研究の方向と実施の段取りについて確認した。これらの作業は今後の実験実施にとって必要不可欠な準備作業となる。
2: おおむね順調に進展している
本年度では日中間の社会関係の文化差と信頼行動の関連に関するWEB調査の本調査そのものの実施に至らなかったが、本調査と非常に近い形で予備実験を実施し有用な結果を得ている。そして、次年度のWEB調査の実施と実験室実験の実施に際して必要な準備作業を順調に進めている。
本研究課題は今後研究計画通りに推進される予定であり、次年度では日中の社会関係と信頼行動のWEB調査の本調査の実施と、日中の大学生を対象とした実験室実験を実施する予定である。
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Organizational Behavior and Human Decision Processes
巻: Vol 120. Issue 2 ページ: 260-271
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America.
巻: Vol 109, No 50 ページ: 20364-20368
10.1073/pnas.1212126109