研究課題/領域番号 |
12J03508
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
戸田 裕之 京都大学, 再生医科学研究所, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 硬さ / 間葉系幹細胞 / アルカリホスファターゼ / 骨分化 / 配向固定化 / ポリマーブラシ |
研究概要 |
本研究の目的は、高分子の技術を駆使した培養基材を作製し、その基材によって幹細胞の増殖分化状態を変化させることである。 これまで、温度やpH変化などの外部刺激によりゲル状態が変化する材料、あるいはタンパク質固定化やポリマーブラシ合成などで機能化された表面をもつ基材など、多くの高分子材料が研究されている。しかし、それらの技術を組み合わせて、幹細胞培養技術としての利用を目指した研究はほとんどない。そこで本研究では、これらの高分子材料作製技術を、幹細胞の増殖や分化の挙動を制御する基材の作製技術として利用することを考えた。本研究の特色は、動的な変化、および二つ以上のファクターを組み合わせた、今までにない幹細胞培養基材を作製することである。 このような新規の培養基材の一つとして、細胞培養条件下での硬さを変化させることのできるリン酸エステル基導入ハイドロゲルを作製した。外的刺激としてアルカリホスファターゼ(ALP)を用いた。ALP処理にともなうリン酸エステル基の加水分解により、時間経過と共にハイドロゲルの硬さが柔らかくなることがわかった。さらに、作製した基材上で間葉系幹細胞の培養を行った。培養2日目にALP処理を行うと、骨分化に適した硬さに変化する基材条件では、培養5日目において骨分化マーカーであるRunx2の発現量が有意に増加することがわかった。 一方、硬さの異なるハイドロゲル、あるいは基材表面のポリマーブラシ密度を変化させた基材上へのシグナルタンパク質配向固定化も試みている。 上述のように、二つ以上のファクターを組み合わせた機能化基材を用いて幹細胞培養を行うことで、幹細胞の増殖あるいは分化を制御するために最も重要なファクターや、幹細胞の時間的変化の様子など、未だ知られていない幹細胞の挙動を発見できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに研究が進んでいる。さらに、発展的な研究として考えていた研究内容に関しても試みることができた。ただし、研究の論文化が終了していないため、現在論文執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、当初の計画通り推進していく予定である。これまでの研究で、培養時に硬さの変化するハイドロゲルの効果が確認された。過去の研究代表者の報告では、シグナルタンパク質の配向固定化を達成している。今後は、組み合わせる一つの因子として、シグナルタンパク質の配向固定化をあわせて検討していきたい。
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