研究課題/領域番号 |
12J03552
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小堀 峻吾 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | アプタマー / リポソーム / アプタザイム / リボスイッチ / 無細胞翻訳系 / 糖尿病 |
研究概要 |
リボスイッチとは特定の小分子に結合し、下流の遺伝子の発現を調整するRNA因子である。その構造は機能的に小分子と結合するアプタマー部と、発現を調節するスイッチ部に分けることができる。そのため、アプタマー部を交換することで、他の小分子に応答するよう改良が可能となっている。当研究では、リボスイッチを自在に扱うために理解と改良、そして糖化合物に応答するリボスイッチの開発を目的とした。初年度では、まずリボスイッチの理解と改良のため、以下の研究を行った。 1.現在まで用いてきたチアミン二リン酸(TPP)に応答するアプタザイムの無細胞翻訳系内での振る舞いを数理モデル化しだ。反応は通常の細胞と同じステップを踏み、転写、翻訳、分解が行われる。合成されたRNAとタンパク質を測定し、数理モデルのパラメーターを求めた。パラメーターを使ったシミュレーションから、反応系でどの段階が律速であるか、パラメーターを変化させた場合のアウトプットの変化率などを計算でき反応をコントロールすることが可能になった。さらに、スイッチとして重要であるシグナル/ノイズ比[SIN比)の挙動を説明できるようになり、SIN比改良のための指針が得ることも可能になった。構築した数理モデルは他のアプタザイムの改良にも適用することができるため、アプタザイムの改良指針を広く得ることができる。この解析は学術雑誌RNAに掲載された。 2.S/N比の改善のためフィードバック回路の導入を試みた。回路をアプタザイム応答系に組み込んだ。その結果、フィードバック回路は構築できたものの、シグナル/ノイズ比を改善することはできなかった。アプタザイムから分離したmRNAの低い翻訳効率が原因であることがわかった。翻訳効率は遺伝子の上流あるリボソーム結合サイトの配列に依存するため、これらを変更することでシグナル/ノイズ比を改善できる可能性がある。フィードバック回路の構築について学術雑誌Molecular BioSystemsに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は1.反応系の数理モデル化、2.シグナル1ノイズ比の改良、3.糖アプタマーの設計を計画していた。計画の内1.2.は無事終了し、成果を発表した。3.に関しては初めての試みであるため、条件検討で予想より時間がかかってしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
計画していた糖アプタマーのSELEXによる選択を行う。グルコースの代謝産物であるグルコース-6-リン酸に特異的な結合するRNA配列、アプタマーを取得する。まず40塩基をランダムに合成したライブラリーを作成する。ライブラリーよりグルコース-6-リン酸に結合する配列をSELEX法により選択する。SELEX法は様々な研究者によって行われているが、当研究室では初の試みとなる。より研究を推進するためRNA工学の専門家であるカリフォルニア大学の横林博士の下で研究を行う。 アプタマーが選択できたら、次はリガンドがRNAに結合しているかどうかを解析するために、インラインプローブを行う。さらにアプタマーをアプタザイムまたはリボスイッチに導入し、遺伝子の発現調整の確認を行う。
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