申請者は自身が発見したPaenibacillus sp. TS12株由来の新規グリコシダーゼ群を網羅的に解析し、ポリシアロガングリオシドからセラミドにまで分解するのに必要な微生物由来のすべてグリコシダーゼの生化学的な解析を完成させることを目的に研究を行った。また、新規グリコシダーゼの構造解析を行うことで、スフィンゴ糖脂質の代謝異常症の治療法として期待されているケミカルシャペロン法への応用を目指した化合物の探察を目的としていた。当該年度は新規スフィンゴ糖脂質分解酵素の諸性質の検討及び結晶化スクリーニングを行った。これまでに報告のない、微生物由来の糖脂質に作用するグリコシダーゼの基質特異性を詳細に検討した。糖脂質とオリゴ糖に対する活性の比較を行い、糖脂質の分解に関わっていると考えられるドメインの同定を行った。そのドメイン欠損体を作製し、糖脂質やオリゴ糖への活性を比較し、ドメインの影響を調べた。また、触媒残基の同定を行い、変異体を作製して活性測定を行った。新規スフィンゴ糖脂質分解酵素の触媒メカニズムの解明を行うためにタンパク質の結晶化スクリーニングを行った。酵素のコンストラクト、結晶化条件を検討したが構造解析可能な結晶を得ることはできなかった。構造解析を行うことはできなかったが、申請者が発見した酵素は既報の哺乳類由来の酵素および微生物由来の酵素と基質特異性の部分でかなり異なり、広範囲の糖脂質に作用することができ、補酵素や界面活性剤の非存在下でも糖脂質に作用できる非常に興味深い酵素である。現在、上記結果をまとめ、論文を作成中である。
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