研究課題
本研究では、受動的音響観測システムによって、鯨類の生息域の時間的、空間的利用特性と個体数密度の推定を可能にすることを目的とする。生息域の時間的、空間的利用特性から、対象動物が「いつ」「どこで」「何を」しているのかを把握でき、個体数密度から、「どのくらい」いるのかがわかる。これを達成できれば、対象水域を音響的にモニタリングするだけで、定量的な資源管理を簡便に実施でき、効果的な保全に資することができる。当該年度は、沿岸域に生息し、人間活動との軋礫から絶滅の危惧される2種の小型鯨類を対象とし、音響データを収集することを目指した。アジアの沿岸域にのみ分布する、スナメリ、ヨウスコウスナメ、シナウスイロイルカを対象とし、日本近海(伊勢湾・三河湾)、中国内陸(揚子江)、マレーシア(ランカウィ島周辺海域)の3つの水域でデータを取得した。2013年6月、8月および2014年2月に各々9日間をかけて、伊勢湾、三河湾、外洋域の各海域を均等にカバーするよう曳航式受動的音響観測調査を実施した。スナメリが検出された海域の水温および水深を調べ、ArcGIS(Esri社)を用いてスナメリ分布、魚類の分布とともに解析した。今後季節分布変化、分布規定要因の解明および資源量の推定をする。2013年5月及び10月にマレーシアのランカウィ島周辺海域において約8日間をかけて調査を実施し、同一海域で複数種(スナメリおよびシナウスイロイルカ)の鳴音データを取得した。5月には計42頭、10月には計33頭の音響的発見があった。今後、同時に実施した目視調査と結果を比較し、音響的な種判別手法を確立する。また、目視発見時の環境と比較し、どのような状況で目視あるいは音響的発見に問題があるのか問題点を抽出する。さらには、目視調査によって推定された個体数と音響的に推定した個体数の比較をする。中国揚子江では、2006年より継続しているモニタリング調査を実施し、現状に関して中国の共同研究者らと意見交換をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度から本研究を開始して、立ち上げた新たなフィールド二か所とこれまでモニタリングを継続しているフィールドの計三か所において、本年度は積極的にデータ収集に努めた。多量なデータを取得することが出来た一方、解析項目は予定以上おこなえていないため、おおむね順調であると考える。
これまでの二年間で想定以上の多量なデータを取得できた。今年度、三つのフィールドで一度ずつ調査を実施し、データを取得する予定であるが、最終年度である本年度は精力的に解析をし、結果をとりまとめて良いジャーナルに投稿したい。学会発表も積極的におこないたい。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom
巻: (In press) ページ: 1-7
10.1017/S002541541400071
PLOS ONE
巻: 8(6) ページ: e65783
10.1371/journal/pone.0065783
Journal of Acoustic Society of America
巻: 134 ページ: 2418-2426
10.1121/1.4816554
http://satoko-kimura.sakura.ne.jp