研究概要 |
研究課題2. MWCNTsを添加することによる複合体の高靭化メカニズムを同定することを目的として, 界面強度の定量的評価を行った. 本研究では, MWCNT-アルミナ間の界面特性を実験的かつ定量的に評価するための手段として, 収束イオンビーム(FIB)加工と走査型電子顕微鏡(SEM)観察下でのMWCNTの引抜き試験を組合せた試験法である「埋込み長さ傾斜制御型引抜試験法」を提案し, 複合材料の破面から突出したMWCNT単味の引抜試験を実施した, 試験は, 研究課題1. において最も破断強度の高いことがわかった2200℃でアニール処理を行ったMWCNTを添加した複合材料を用いた. 本研究で提案した試験法を用いることで界面強度を実験的かつ定量的に評価することに成功した. 複合材料の破壊靭性値向上(MWCNT未添加のアルミナ焼結体に比べて45%向上)は, MWCNT-アルミナ間の界面剥離ならびにMWCNTの引抜けによる高靭化効果によることがわかり, さらに界面強度を小さくすることで更なる破壊靭性値の増大が期待されることが明らかとなった. 研究課題3. MWCNTの高充填化を達成する目的で, 構成要素ナノ配列制御法を用いた合成法の確立を目指している, アルミナ母材ならびにMWCNTのそれぞれを水溶媒中に分散させた際にpHを測定し, 両者のpHの差が最大となるpH値を定めた. 本研究の先行研究では1 vol.%を超えるMWCNTを添加すると複合材料の曲げ強度ならびに破壊靭性値は低下することが明らかとなっている. 一方, 本法ではMWCNTを5 vol.%添加した複合材料においてMWCNT未添加のアルミナ焼結体に比べて高い曲げ強度と破壊靭性値を得ることに成功した. また, MWCNTを10 vol.%添加した複合材料においても, 5 vol.%添加した複合材料に比べて値は小さいものの, アルミナ焼結体と同等もしくは高い機械的特性を有していることが認められた. しかしながら, 破壊靭性値の絶対値は依然小さく(3~4 MPa m1/2), 更なる改善が必要であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カーボンナノチューブ(CM)の埋込長を制御してCNTの引抜き試験を実施し, CNT/セラミックス複合材料の界面強度を実験的かつ定量的に世界で初めて成功した. また, 構成要素ナノ配列制御法の確立を目指し, 従来法に比べて2倍程度のCNTの添加に成功している. これらの成果は, CNT/セラミックス複合材料の破壊靭性値改善のために重要な知見を提供するものである.
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今後の研究の推進方策 |
研究課題3.において, 従来法に比べてCNTを2倍程度添加することに成功し, CNTを5~10 vol.%添加した複合材料はCNT未添加のアルミナ焼結体に比べて同等もしくは高い機械的特性を有している. しかしながら, これらの特性の絶対値は依然として小さく, CNTとアルミナの混合法ならびに焼結条件のさらなる工夫が必要である.
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