研究課題/領域番号 |
12J03596
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
尹 シセキ 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | 松本清張 / 井上靖 / 「遭難」 / 「氷壁」 / 週刊誌 / 知の形態 / 「失踪」 / 「黒い画集」 |
研究概要 |
2012年度は、松本清張の初期作品と週刊誌時代の相関関係をめぐって資料調査をした上で、研究発表と論文投稿を行った。(13に記載) 「松本清張と井上靖の「登山」表象―『遭難』と『氷壁』におけるメディアへのまなざし」を題して、「登山ブーム」、「アルピニズム」を描く際の、松本清張と井上靖の登山者およびメディアに対するまなざしの差異について分析した。また、「『週刊朝日』と清張ミステリー―小説「失踪」の語りから考える―」を題にした論文は、1950年代において、週刊誌メディアに多く掲載された清張ミステリーが週刊誌と類似した性格を持っているという点に着目し、両者が同じように同時代の話題となった事件を取り上げて、類似した語り方で事件を記録すること、また、小説と記事が相互に補完することを論じた。さらに、週刊誌時代において、週刊誌メディアは新たな知の形態を作り上げる役割を果たし、その中で清張ミステリーが積極的に参加していたことを明らかにした。 先行研究は、清張ミステリーがブームになった原因を、作品の内容だけから見いだそうとしたものが多いのに対して、本研究は、清張ミステリーと同時代のメディアが相互的な取り込んだ結果として、松本清張ブームが起きたと証明した。年次計画の一年目に予定した通りに研究を進めていると思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
松本清張と同時代の週刊誌メディアの相関関係を分析することを通して、1950年代の日本における「松本清張ブーム」の背後にあった文化的構造を一部解明できたと考えられる。 年次計画の一年目の目標はおおむね達成した。
|
今後の研究の推進方策 |
2013年度は、松本清張ブームの日中比較を行う予定である。『日本の黒い霧』、『深層海流』など、占領期の歴史を描く作品が、日本と中国において、どのような社会的の状況の中で読まれたのか、どのような読まれ方をされたのかを分析することを通して、松本清張ブームが起きた当時の両国における文化的構造を解明する。
|