研究課題/領域番号 |
12J03610
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
入江 広隆 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
|
キーワード | 非摂動論的再構成 / ストークス現象 / 行列模型 / 非摂動論的弦理論 |
研究概要 |
今年度は特に、これまで開発してきた「多重カット行列模型」における議論をそれまで幅広く研究されてきた「(p,q)ミニマル弦理論」に適用することを考え、実際に真空転移機構を定量的に考察できることを示しました。この弦理論は世界面の定式化(リューヴィル理論)がよく理解されており、Dブレーン、インスタントン等のソリトン解の理解も進んでいます。実際に、このような系で「安定不安定性」が取り出せると言うことは、同様に定義される一般の摂動論的弦理論においても同様な機構が存在すると期待出来ます。従って、このような系で「ストークス現象」を理解することで、「安定不安定性」のメカニズムを探ります。 まずは(p,ωミニマル弦理論が「pカット行列模型」に埋め込める事を示し、大枠としてこれまでの方法を用いて非摂動論的再構成が行えることを示しました。特に、ミニマル弦理論に不安定モードが存在し、その不安定性が世界面の理解ではゴーストDインスタントンで与えられることを指摘しました。これは一般の摂動論的弦理論にも存在する動力学的自由度です。さらに重要なことは、「そのモードが不安定性に寄与するかどうか」がストークス現象でもって規定されていることを示しました。それだけではなく、不安定性であることから、「真の真空」が存在し、その「真の真空周りでの摂動的振幅」も実際に計算してみせました。実際に、弦の結合定数による摂動展開では書けない関数で書かれており、非摂動論的弦理論にはその様な真空が大多数であることを定量的に示唆したことも重要だと思います。 また、この仕事が解決した長年の未解決問題として「非摂動論的不定性」の問題があります。私たちは非摂動論的な不定性は、「ストークス現象の物理的条件」として固定できることを示しました。これは、私たちの非摂動論的完全性に対する理解において、大きな一歩を与えるものだと考えています。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際に摂動論的真空における不安定性及びその定量的な記述が可能である事を示せた点でおおむね順調であると言える。現在、非摂動論的再構成における双対性に関する新しい論文を2本執筆中であるが、それが年度内に出せていれば、当初計画以上の進展としてよかったであっただろう。
|
今後の研究の推進方策 |
今後もこの調子で研究を遂行してゆく。現在執筆中の論文が発表できしだい、海外の国際会議での発表等を通じて精力的に宣伝活動や専門家の方たちとの意見交換などを行なってゆきたい。双対性の話題に関しては、現在執筆中のもの以外にもまだいくつか新しい結果が得られると思われる。また他の領域への応用等にも目を向け、さらに共同研究の幅を広げることも視野に入れて研究を行なってゆきたい。
|