研究概要 |
今年度は、「(p, q)ミニマル弦理論」の非摂動論的再構成を包括的に全ての(p, q)において構成しました。そしてその上で、このミニマル弦が持つ双対性の一つである「p-q双対性」を非摂動論的に定式化し、私は「一般に弦の双対性は非摂動論的に壊れる」ことを示し、「弦の双対性を非摂動論的に保つ」ということが弦理論の非摂動論的不定性を制限する原理として働くことを定量的に示しました。即ち、弦理論の摂動論的定式化だけでは定まらない「弦理論の未定義部分」が「非摂動論的双対性原理」によって補われることを世界で初めて確認したと言えます。これは弦理論の非摂動論的定義を理解する上で非常に重要な事実だと思われます。また、前年度の「非摂動論的弦理論の行列模型による記述は不定性があるが、その不定性は行列模型によるくアーティファクト〉であって本質的ではない。双対性でっながる複数の行列模型全体で以って弦理論を定義するべきだ。」という予想を実際に正しい方向性であることを示したのです。 「(p, q)ミニマル弦理論」という摂動論的弦理論からストークス現象の解空間でもって非摂動論的弦理論の解空間を構成しました。するとこの再構成の仕方にスペクトラル曲線F(x, y)=0の「x」を基準にするか「y」を基準にするかの自由度が生じます。これがが「p-q双対性」です。摂動論においてこの双対性は摂動論の全次数において正しいことはすでに知られており、そのような双対性に非摂動論的不一致が生じることは極めて非自明なことです。具体的には「x座標上」で固有値の動力学として理解できる系が、「y座標上」では固有値の動力学として理解できなくなります。これはy座標の自由度を先に積分してしまった補助場として動力学的意味を持たなくなるためだと考えられます。これと同様なことがxとyをひっくり返すことでも現れます。そして、「x座標とy座標の両方で動力学的意味を持つ」ことを非摂動論的双対性だとすると、非摂動論的不定性に制限を与えることが出来るのです。
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