研究課題/領域番号 |
12J03646
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松村 幸彦 東北大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | Hevajra / ラトナーカラシャーンティ / Saroruhavajra / 三三昧 / 観想法 / ムクターヴァリー / ブラマハラ |
研究概要 |
本年度は前年度に引き続き、ラトナーカラシャーンティ著『ブラマハラ』に説かれる三三昧とそこに各々配される仏の三身の関係を、同じくラトナーカラシャーンティの著したヘーヴァジュラ註『ムクターヴァリー』に説かれる解釈と比較し、考察した。本研究の目的は『ヘーヴァジュラタントラ』の成立に深く関わったとされるサロールハヴァジュラの著したテキストの批判的な校訂・翻訳を行い、その思想などを明らかにし、同タントラの成立や流派形成に関する新たな知見を提供することであった。その中で、同タントラの伝統の中で最後期に位置すると思われるラトナーカラシャーンティの説く儀礼や思想と比較考察することとしていた。そのため、ラトナーカラシャーンティの教学理解をより深める必要があり、当初の研究計画に修正を加え、彼の著作に対する研究を前年度に引き続き実施した。 『ヘーヴァジュラタントラ』第一カルパ第一章、第ニカルパ第二章・第五章を中心とする『ムクターヴァリー』の註釈箇処を読み進め、そこに説かれる三三昧と仏の三身の関係について考察した。そこに説かれる記述によれば、三身それぞれの解釈の内容と三三昧各々の儀礼の内容に対応すること、そしてヘーヴァジュラ系の観想法であっても他のタントラの儀礼などを取り入れていた可能性があることが分かった。以上により、ラトナーカラシャーンティの説く儀礼などの一端を明らかにすることが出来た。 また、当初の研究計画であったサロールハヴァジュラ著『ヘーヴァジュラサーダノーパーイカ』の批判的な校訂・翻訳作業を行った。同テキストは本研究で中心として用いるテキストの一つであり、サロールハヴァジュラの観想法に対する儀礼などの理解の為にも重要なものである。訳文や内容の理解について不明確な箇処があるため、関連文献などを用いてその内容の理解を深めることは来年度の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に変更点が生じたが、それは本研究を行う上で必要不可欠なものであった。また、本来取り掛かる予定だった作業にも着手することが出来たため、研究計画全体からみればおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度蒐集した『ヴァジュラプラディーパ』の写本の校訂・翻訳作業を中心にしつつ、『ヘーヴァジュラサーダノーパーイカ』の批判的な校訂・翻訳作業、そしてその内容理解を他の関連文献を参照し、行うこととする。当初、次年度はチベット資料を用いて、サロールハヴァジュラの人物像や法統について詳細な研究を行う予定であった。しかし本年度までに計画の変更が生じたため、それを中心として行うことが難しいかと思われるが、適宜チベット資料を参照することで、計画の変更により生じる問題点を補っていきたい。
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