研究課題/領域番号 |
12J03655
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
陳 莉敏 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 1分子観察 / ジストロフィン / ジストログリカン |
研究概要 |
本研究では、2つの膜構造体、すなわち、ジストロフィン-ジストログリカン複合体(DP-DG複合体)と接着斑(focal adhesion=FA)、について以下の3点を明らかにすることを目標としている。(1)DP-DG複合体、FA、それらとアクチン膜骨格まで加えたシステムが、どのように形成されるか、(2)筋組織の分化過程や筋細胞に外力負荷が繰り返されたとき、そのシステムがどのように変化するか、(3)DPの欠損や変異が、分化過程や膜の力学的安定性にどのような影響を及ぼすか。 昨年度(平成25年度)は、DP-DG複合体の機能を調べるため、まずは株化培養細胞にDP-Haloタグタンパク質を発現させることにした。これにタグタンパク質の蛍光リガンドを加えて結合させ、蛍光標識できる。しかしDPの分子量が大きいため(426kDa)、発現に成功した報告はない。そこで、DP分子の既知の機能ドメインを寄せ集めて作られた分子量の小さい人工分子であるmicroDP (130kDa)を細胞に発現させることで、microDPの1分子観察に成功した。 一方、既に出版された他の研究では、膜貫通型タンパク質のDGはERにおいて1本のポリペプチドとして合成されたあと、ゴルジ、または、細胞膜において、タンパク質切断酵素によってαとβの2つのサブユニットに分断される。しかしそれらのサブユニットが、非共有結合で結合したままでいると考えられてきたが、確証は得られていない。さらに最近、DGのαサブユニットはさらに、N末端側がいくつかの切断を受けて失われることが報告された。これらを確定することは、本研究を進めるのには重要であるので、以下の実験をおこなった。すなわち、DGのαサブユニットの3つのポジション(29、170、500)に蛍光標識できるタグを挿入して、1分子観察した。その結果、DGのαサブユニットはポジション29と170の間で切断されることが確定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、ジストログリカン(DG)と人エジストロフィン分子(microDP)をそれぞれ株化培養細胞に発現させ、1分子観察をすることに成功した。 さらに、DGのαサブユニットはアミノ酸配列の29番目、及び170番目のあとで切断されることを1分子観察で明らかにした。本年度は、これらに基づき、microDPとDGを2色同時1分子観察し、それらの相互作用を明らかにする。さらに、DP-DG複合体と会合する可能性が有る他の膜貫通型タンパク質との相互作用を餌明しようとしている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はDPとDGを2色同時1分子観察し、それらの相互作用を明らかにする。さらに、DP-DG複合体と会合するsarcoglycanとsarcospan (膜貫通型タンパク質)を細胞外から蛍光色素標識したFabでラベルし、相互作用を3色1分子観察で調べようと計画している。
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