研究課題/領域番号 |
12J03684
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今野 晃嗣 京都大学, 野生動物研究センター, 特別研究員(PD)
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キーワード | イヌ / 行動 / 犬種差 / 遺伝子多型 |
研究概要 |
申請者の研究課題「イヌ属における遺伝情報を利用した行動評価系の確立」は、イヌを主な対象として、その行動や認知特性の遺伝的基盤を明らかにすることを目的とする。今年度は、研究I「イエイヌの行動評価系の開発」 において、犬種により異なる社会行動にどのような遺伝的背景があるかを推定するため、さまざまな犬種を対象にイヌの人に対する視線コミュニケーション行動を調べた。その結果、日本在来犬を含む原始的タイプの犬種は、他の純粋犬種と比べてヒトへの注視行動が維持されないことが明らかになった。この結果は、オオカミと遺伝的に近い犬種とそれ以外の犬種では人とのコミュニケーション様式が異なることを示唆しており、イヌの行動の遺伝的寄与を知る上で重要な知見と考えられる。研究II「イエイヌの行動特性の遺伝的基盤の解明」.では、イヌの行動の個体差を支える遺伝基盤を同定するため、イヌの行動と遺伝子の解析を行うことで、遺伝情報と行動表現型の両者のデータの蓄積を進めた。麻薬探知犬では、既に種内の遺伝子多型の存在が明らかになっているアンドロゲン受容体遺伝子(AR)、ドーパミン受容体D4遺伝子、セロトニン輸送体遺伝子、毛色に関与する遺伝子(MCIR)といった遺伝子領域のタイピングを進めた。行動に関しては、訓練士による適性評価値に加え、各個体の訓練時の行動の映像データを得ることができた。伴侶犬では、飼い主が評価する質問紙のデータに加え、研究1と同様の行動実験から、人に対するコミュニケーション行動の個体差を抽出した。今後、候補遺伝子の多型と一連の行動表現型の関連解析を進めることによって、イヌの行動の個体差を支える遺伝子領域が明らかになることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究拠点の変化に伴い、飼育家庭での訪問調査や訓練施設との共同研究など、イヌの行動と遺伝子のデータベースを構築するための研究体制を整備した。これにより得られた学術成果は国内外の学会で発表されただけでなく、現在、学術雑誌上での論文化が進められていることから、研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
イヌの行動と遺伝情報をさらに蓄積することにより本研究を発展させる。次年度以降はイエイヌ以外のイヌ科動物にも対象を拡大し、イヌ属の行動とゲノムのデータベースの充実を図る。得られた学術的成果は国内外の学会で発表するとともに学術誌での論文化を進める。
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