研究課題
病原性クラミジアの感染様式や生存戦略については不明な点が多い。我々はこれ迄に、病原性クラミジアが上皮細胞だけでなく、リンパ球細胞にも感染することを見出してきた。そこで平成25年度はリンパ球細胞を含めたクラミジアの感染成立に関わる菌体、または宿主細胞側の分子特定を目標に解析を行った。リンパ球細胞(Jurkat)感染時のクラミジア遺伝子(C. trachomatis L2 434/Bu)の発現をDNAマイクロアレイで解析したところ、遺伝子の発現パターンは上皮系細胞(HeLa)とほぼ同じであった。またIII型分泌装置(T3SS)とT3SSから分泌されるエフェクターに注目すると、それらの多くはJurkat細胞、HeLa細胞共に感染後期に発現が上昇していたが、いくつかの遺伝子はJurkat細胞で発現が低かった。またクラミジアの増殖に必要なエフェクターcopNはJurkat細胞とHeLa細胞で発現量が同程度だった。我々はCopNの会合分子としてhuman aldolase Aを同定することにも成功した。CopN-aldolaseA相互作用は上皮細胞(HEp-2)とリンパ球細胞(Jurkat)の両方で認められた。以上に示した通り、平成25年度はクラミジアの増殖に関わると予想される遺伝子についてT3SSを中心にスクリーニングを行った。またCopNと相互作用する宿主蛋白としてaldolase Aを同定した。一方、アメーバ等の共生細菌として生息する原始的なクラミジアは病原性クラミジアエフェクターの進化の道筋を理解する上で重要な手がかりとして注目されている。そこで原始的なクラミジア(Neochlamydia)のゲノムを解読し、新規エフェクター候補をin silicoで予測した。これらの成果は、クラミジアの生存戦略を明らかにするための重要な知見であり、今後はこれらの成果をもとに解析を進める。
2: おおむね順調に進展している
リンパ球細胞へのクラミジア感染に関わる分子を明らかにすることを目的に研究を行い、まずは上皮細胞ならびにリンパ球細胞でのクラミジア遺伝子発現の網羅的な解析を行った。またIII型分泌装置から宿主に打ち込まれるエフェクター分子に注目し、エフェクターの一つであるCopNがヒトのaldolase Aと相互作用することを見出した。さらに原始的なクラミジアNeochlamydiaのドラフトゲノムを解析し、エフェクター候補を抽出した。以上の成果から、現在までの研究はおおむね順調に進展していると自己評価した。
昨年度に引き続き、病原性クラミジアの細胞内生存様式の解明を目的に研究を進める。まずは、昨年度に行なったDNAマイクロアレイ解析にて明らかになった分泌エフェクター候補遺伝子について精査する。具体的には、それら遺伝子がコードする蛋白の大腸菌組み換え体を作製し、それらと相互作用する宿主細胞の蛋白を同定する。そして、その相互作用が与えるクラミジア増殖への影響について検討する。また、昨年度に明らかにしたCopNとaldolase Aの相互作用についても引き続き解析を進め、これらの蛋白がどのようにしてクラミジア感染、増殖に影響しているのかを精査していく。
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