これまでに我々はクラミジアが上皮細胞だけでなくリンパ球細胞内においても増殖できることを見出してきた。このことから、クラミジアは様々な細胞に適応し増殖することができることが示唆されるが、それにはクラミジアのIII型分泌装置(T3SS)とそれを介して宿主細胞に打ち込まれるエフェクター蛋白質が重要な役割を担っていると考えられる。我々の予備的な検討からクラミジアのT3SSエフェクターであるCopNはリンパ球細胞においても上皮細胞に感染した時と同様に発現することがわかった。そこで我々はクラミジアがリンパ球細胞に感染する際にもCopNは何らかの役割を果たしていると考え、平成26年度はCopNに注目し研究を行った。 我々は以前にChlamydia pneumoniaeのCopNがヒト解糖系酵素Aldolase Aと相互作用することを見出しており、平成26年度はリンパ球細胞に比べて実験が行いやすい上皮細胞を用いてCopNの機能解析に取り組んだ。まずAldolase Aとの結合に必要なCopNの領域を精査するために、大腸菌を用いて作製したCopNの欠失体とヒト上皮細胞(HEp-2細胞)とでプルダウンしSDS-PAGEとウエスタンブロッティングで解析した。その結果、Aldolase Aとの結合にはChlamydia pneumoniae CopNのC末端側の領域(270 ~ 399 aa)が重要であることがわかった。次に、aldolase Aの発現がクラミジア感染によって変化するかどうかについてqRT-PCRで解析を行った結果、aldolase Aは感染に伴い発現が上昇することがわかった。さらにaldolase Aノックダウン細胞ではクラミジアの増殖が増強したことから、Aldolase Aはクラミジア感染の何らかの刺激により発現が上昇し、クラミジア増殖を抑制する方向にはたらくことが示唆された。
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