研究課題/領域番号 |
12J03701
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
尾崎 裕介 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 自然電位 / 透水構造 / 比貯留係数 / 逆解析 / 非定常解析 / 不飽和層 |
研究概要 |
アメリカのボイシ州立大学の地下水探査手法の開発を目的とした実験サイト(Boise Hydrogeophysical Research Site, BHRS)で、2007年に行われた注水試験に伴う自然電位分布の実データ解析を行い透水構造の推定を行った。私の開発した手法により得られた解析結果を、クロスホールテストにより推定された透水構造と比較した。私の手法で得られた解析結果では高透水性の不均質構造が推定されたが、クロスホールテストによって推定された透水構造にも、ほぼ同じ位置にほぼ同程度の高透水性不均質構造が存在することを確認できた。この結果より、実際のデータにおいても自然電位分布から透水構造が推定できることを確認できたと同時に私の解析した手法が透水構造を推定する新しい手法として有効であることを確認できた。私の開発している手法は既存の手法と比較して水位観測に必要な井戸を電位観測用の電極で置き換えることが可能であり、本手法により低コストで透水構造を推定できることが可能となった。 3次元非定常解析手法の開発も行った。自然電位の非定常解析は、自然電位が地下水流動と電位の相互の影響を考慮して解く連成問題の逆解析であり、既存の解析手法を拡張しただけでは計算時間及び必要なメモリーが莫大になってしまう難点がある。これを克服するために、随伴方程式法とよばれる制御理論でよく用いられる手法を応用しこの困難を克服した。非定常解析では、透水係数だけでなく非貯留係数も推定することが可能である。数値計算テストで、非定常解析によって得られた透水構造と定常解析によって得られた透水構造を比較したところ、非定常解析を行った場合には明らかな解像度の向上を確認することができた。非定常解析を行うことが可能となったので、モニタリングデータへの本手法の適用も可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、実データへの適用及び問題点の洗い出しをおこなった。実データ解析では、他手法によって推定された透水構造と同様な結果を得ることができ私の手法の信頼性を確認することができた。実データ解析では解像度が低いといった問題や定常状態しか解析出来ないという問題点が明らかとなったが、私の手法を、非定常状態のデータを解析できるように拡張することでこれらの問題点を解決できた。このように、実際のデータへの適用可能性を確認でき、今後想定される問題も予測・解決することができたために計画以上に進捗しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
自然電位から透水構造を推定するメリットは、低コストで透水構造を推定できることが可能であることである。BHRSでのデータを用い3次元非定常解析を行い、クロスホールテストによる推定結果と比較することで、この点を証明する予定である。また、3次元非定常解析が可能となったので、モニタリングデータへの適用も計画している。BHRSのデータは、数メートルスケールのデータであるが、数百メートルスケールのモニタリングデータに関する論文も発表されているので、このモニタリングデータの解析を行い、数百メートルスケールの透水構造推定可能性についても検討する予定である。
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