研究課題/領域番号 |
12J03708
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
毎田 悠承 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 鉄筋コンクリート構造 / 制振ダンパー / 鋼板 / スタッド / 異形鉄筋 |
研究概要 |
本年度は昨年度行った梁に作用する軸方向力を考慮したダンパー付き1層1スパンの鉄筋コンクリートフレームの繰り返し静的載荷実験を再現する3次元有限要素解析を行った。 まず、実験結果の詳細な分析をもとに、鉄筋コンクリート平面架構にダンパーを取り付けた場合の接合部やフレームの挙動を詳細かつ正確に再現する解析モデルを作成した。荷重-層間変形角関係において、実験結果と解析結果は良い対応を示しており、コンクリートのひび割れや鉄筋降伏による非線形性も精度良く再現できた。以上のことから、本解析モデルの有効性を確認できたと言える。次いで、ダンパー摺動部滑り量のロスに関して、梁とダンパー接合部の軸変形に着目して分析した。実験結果から、ダンパー摺動部滑り量のロスはダンパー接合部の軸変形よりも梁の軸変形による影響が支配的であることがわかっていたが、解析においてもこの傾向を確認し、その影響を定量的に評価した。また、本解析モデルを基に梁内部の異形鉄筋の断面寸法を変更して検討した結果、ダンパー軸力の水平成分に相当する軸力に抵抗できる断面の異形鉄筋を梁に通しておけば、ダンパーの滑り量に影響がでない程度の梁軸変形に抑えられることが分かった。また、ダンパー接合部周辺のコンクリートの主応力度分布や鉄筋の応力度分布、変形図などから、柱・梁部材断面中央に異形鉄筋を通したことによって鉄筋コンクリート柱・梁部材に悪影響は与えないことを確認した。したがって、柱・梁部材断面中央に異形鉄筋を通すことで、鉄筋コンクリートフレームに悪影響を与えずに梁の軸変形を抑えることが可能になり、摩擦ダンパー本来の性能が発揮できることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダンパーを取り付けた鉄筋コンクリート平面架構の有限要素解析を行った結果、ダンパー接合部の軸変形および梁の軸変形がダンパー摺動部滑り量のロスに与える影響を定量的に評価でき、おおむね順調に研究が進展している。今後はこのロスの影響を考慮した設計法を提案する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究成果から、ダンパーによる付加軸力が作用してもダンパー軸力の水平成分に相当する軸力に抵抗できる断面の異形鉄筋を梁に通しておけば、骨組とダンパーともに有効に機能することが確認されている。来年度はダンパー付き鉄筋コンクリート建物の地震応答解析を行うことで本接合方法の動的挙動について検討を進める。また、ダンパー付き鉄筋コンクリート建物の包括的な制振設計法の構築を進める。
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