| 研究概要 |
本研究の目的は、発達過程における化学物質曝露と精神の病態発症の関連性を明らかにするため、高次脳機能に関わる主要なシステムでありながらも発達毒性指標としては未開拓分野である「神経内分泌ストレス応答系」に焦点をあてた評価系を確立することである。アプローチとして、伝統的ならびに最新の行動・生化学・分子生物学的手法を用いた多角的検討により、環境化学物質のストレス応答系への発達毒性評価を行う。実施計画に基づき、高次脳機能異常を呈する環境化学物質曝露モデルとして、2,3,7,8-四塩素化ジベンゾ-ρ-ジオキシン(TCDD)の周産期曝露によるモデルマウスを作成した。また、母子分離など外的生育条件の負荷により神経内分泌ストレス応答系の指標である視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の機能異常が顕われることが報告されている処置を行った神経内分泌ストレス障害モデルマウスを陽性条件として2種類導入し、周産期TCDD曝露マウスと比較した。H24年度の成果として、(1)ストレス反応や社会性行動を定量化するための行動試験を計画通りに実施し、周産期TCDD曝露マウスにおける行動奇形、特に恐怖情動性異常をみいだした。新たな行動評価手法も検討し、妥当性の確認を行っている。(2)複数のストレス負荷実験による生化学評価を行った結果、周産期TCDD曝露マウスにおける内分泌反応異常が確認された。(3)陽性対照としてのストレス障害モデルマウスにおいては、実施計画にて提起した行動解析法を用い、周産期TCDD曝露マウスと同様の社会行動異常を示す外的生育条件と、逆方向の社会行動異常を示す条件をみいだした。これらモデルマウスにおいて、ストレス応答に関わる遺伝子発現解析を行い、前頭葉と扁桃体の機能的結合の変化が関与する可能性を示す知見を得ており、外的生育条件とダイオキシン曝露影響のメカニズムの共通性と相違点について、さらに解析する必要性が示された。
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