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2013 年度 実績報告書

周産期環境化学物質曝露による神経内分泌ストレス反応毒性評価系の確立

研究課題

研究課題/領域番号 12J03722
研究機関東京大学

研究代表者

ベナー 聖子  東京大学, 医学系研究科, 特別研究員DC1

キーワード環境化学物質 / 神経内分泌ストレス応答 / 周産期ストレス / ストレス障害モデルマウス
研究概要

本研究は、発達過程における化学物質曝露による精神疾患発症のリスクを、神経内分泌ストレス反応系への毒性影響に着目して評価することを目的としている。高次脳機能や社会性へ影響が既に報告されている周産期低用量ダイオキシン曝露マウスモデル(Endo et al., PLoS One, 2012 ; 他)を用い、同条件曝露が生体のストレス応答系の発達に及ぼす影響を生化学的・分子生物学的手法による解析を進めている。各種ストレス負荷、ならびに薬理的視床下部・下垂体・副腎(HPA)軸活性に対するコルチコステロン分泌パターンの解析から、周産期に高用量のダイオキシン曝露を受けたマウスにおけるHPA軸活性の亢進と中枢フィードバック制御異常を示唆する結果を当該年度までに得ていた。当該年度には、(1)中枢における主要なストレス応答(HPA軸活性)制御領域である海馬におけるストレス応答関連遺伝子発現の定量解析により候補分子を同定し、生化学的所見の生物学的基盤の解明の糸口を得ることができた。そして成熟個体を用いた生化学的解析で最も顕著な毒性(ストレスホルモンの過分泌など)が顕れていたダイオキシン高用量曝露群の海馬において有意な変動低下がみとめられた候補分子が、幼少期の海馬においても変動していることをみいだした(環境ホルモン学会、北米毒性学会にて発表)。これにより、海馬が周産期ダイオキシン曝露影響の影響を受けやすい脳領域のひとつであること、その毒性が用量依存性を顕すことが示された。海馬はHPA軸フィードバックに重要な役割を持つ脳領域であることから、生化学的知見を支持する結果となった。留意すべきことに、周産期ダイオキシン曝露マウスが成熟後に生化学的なストレス応答性異常を呈する原因として、周産期におけるダイオキシン曝露が胎生期~新生児期の神経内分泌ストレス応答系の健常な形成・発達、特にはHPA軸中枢フィードバックに関わる発達に破綻がひきおこされた可能性が示唆された。(2)周産期ダイオキシン曝露マウスの比較検討用として作製した2種類の神経内分泌ストレス反応異常モデルから得られた結果をとりまとめた(Benner et al., 論文投稿中)。当該年度には、新たに胎生期ストレス曝露モデルマウスを作製し、生化学的・行動学的・解剖学的解析を実施した。このモデルマウスは、中枢フィードバック制御の異常など、ダイオキシン曝露モデルマウスと非常に類似した表現系を示した。(3)脳の特定領域内の神経細胞における遺伝子発現レベルを解析する上で有用なレーザーマイクロダイセクション(LMD)と定量的PCRを組み合わせた解析法において、その操作過程における固定、染色、遺伝子定量解析における最適条件を見いだすための条件を検討した(Benner et al., 論文投稿中)

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

H25年度では新たに周産期ダイオキシン曝露マウスでみとめられる神経内分泌ストレス応答系の生理学的異常を支持する神経基盤を示すことができた。更なる科学的根拠として、周産期ストレス曝露モデルマウスと周産期ダイオキシン曝露マウスとの共通指標をみいだした。国内・国際学会にて積極的に発表を行い、学術論文は2本筆頭著者として投稿準備を順調に進めている。

今後の研究の推進方策

周産期ダイオキシン曝露によるストレス応答異常の神経基盤に明確化するため、視床下部・下垂体・副腎におけるストレス応答関連遺伝子解析を進めていく。また、行動上の変化と共に変動する生化学的・分子指標に基づく神経内分泌ストレス応答性機能の評価を達成する為に、生化学的解析と行動を並行して捉えられる試験系を検討する。周産期ダイオキシン曝露マウス陽性モデルとしての周産期ストレス曝露マウスの表現型解析を進める。これまでの結果をとりまとめ、学術論文を準備する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014 2013

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] Impact of perinatal TCDD exposure on neuroendocrine stress response system in mice.2014

    • 著者名/発表者名
      S. Benner, T. Inoshita, Y. Ding, M. Kakeyama, C. Tohyama
    • 学会等名
      Society of Toxicology (SOT) 53nd Annual Meeting and ToxExpo.
    • 発表場所
      Phoenix Convention Center, Phoenix, AZ, USA
    • 年月日
      2014-03-26
  • [学会発表] 周産期TCDD曝露モデルマウスにおけるストレス応答系への発達毒性影響2013

    • 著者名/発表者名
      ベナー聖子, 井下太貴, 丁雲潔, 掛山正心, 遠山千春.
    • 学会等名
      環境ホルモン学会第16回研究発表会
    • 発表場所
      東京大学山上会館
    • 年月日
      2013-12-12
  • [学会発表] 競争環境下におけるEarly Life Stress (ELS)モデルマウスの表現型比較2013

    • 著者名/発表者名
      ベナー聖子, 遠藤のぞみ, 遠藤俊裕, 吉岡亘, 西村典子, 倉繁秋江, 遠山千春, 掛山正心
    • 学会等名
      第19回日本行動神経内分泌研究会全国集会
    • 発表場所
      国民宿舎レインボー桜島(鹿児島)
    • 年月日
      2013-07-05
  • [学会発表] Altestions in the Mesolimbic Dopaminergic System and Fear Related Emotional Functions in Mice Perinatally ExPosed to TCDD.2013

    • 著者名/発表者名
      S. Benner, A. Haijima, R. Kobayakawa, K. Kobayakawa, M. Kakeyama, C. Tohyama.
    • 学会等名
      International Congress of Toxicology XIII
    • 発表場所
      COEX, Soul, Korea
    • 年月日
      2013-07-02

URL: 

公開日: 2015-07-15  

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