研究概要 |
南海トラフで発生する巨大海溝型地震の想定震源域西端の日向灘のプレート間固着の不均質構造を明らかにすることは,この地域で発生する海溝型地震の特徴や海溝型地震の連動性評価において極めて重要である. 今年度は日向灘のプレート間固着状態とその時空間スケールの特徴を明らかにし,固着域のマッピングを行うため小繰り返し地震解析を行いデータの蓄積を進めた.今年度進めた解析により,日向灘中南部で2012年前半に小繰り返し地震活動が一時的に活発化し,その後M5級のプレート境界地震を含めた地震活動がやや活発化したことが明らかになった.また,今年度は小繰り返し地震解析の半自動化をすすめ,解析作業の効率を高めることができた.過去に日向灘で発生したM7級の海溝型地震(1931,1941,1961,1970年)について,震源過程解析を行うために気象庁で保存されている煤書き記録を入手した(土佐清水,室戸,高知,宇和島,松山).また,これらの海溝型地震の本震および余震について,近年行われた海域における構造探査と地震波トモグラフィーの結果(Yamamoto et al.,2013)を利用して再度震源再決定を行った. 今年度は地殻変動解析についても取り組み,小繰り返し地震解析から推定した非地震性すべりとの統合解析を行った.特に,これまで地殻変動解析単独では分解能が低くて推定困難であった「海溝軸付近のプレート境界浅部の固着」について,統合処理により今後の観測の継続により推定できる可能性を示すことが出来た. この他,当初計画になかった約80日間の海底地震観測を今年度と来年度で新たに行うことが出来ることになった.今年度は日向灘中北部の小繰り返し地震が発生している領域をカバーするように観測点を配置し,データを無事全観測点で取得した.期間中に発生した地震について波形の検測と震源決定を陸上観測網のデータと併せて行い,海域で発生する地震を扱う上で非常に重要な基礎データを得ることが出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は過去のM7級海溝型地震の震源過程解析について,データの準備を行う途中段階止まりで,震源過程の解析まで進めることが出来なかった.データの準備(記録のデジタイズ)がなかなかうまくいかなかったことと,学位論文の執筆に時間を割いたことも作業を進めることが出来なかった大きな理由である.小繰り返し地震の解析とデータ蓄積に関しては順調に進んでいる.マニュアルチェックがどうしても必要なため,完全自動化には出来ないが,それ以外の処理を自動化した.
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今後の研究の推進方策 |
・震源過程解析が遅れているので,収集したデータを整理し早急に解析を行う.特に,1931年と1961年の日向灘地震について優先的に解析を進める. ・当初は既存(公表済みの結果)の地球物理学的知見とマッピングしたプレート間の固着域を比較・検討を行う予定だったが,今年度と来年度実施する海底地震観測で得られたデータから日向灘海域の速度構造モデルや応力場の情報を求めることが出来るので,これらの解析を進める.
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