研究課題/領域番号 |
12J03759
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉野 修平 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | バイオ燃料電池 / グルコースセンサ / ハイドロゲル / カーボンナノチューブ |
研究概要 |
発電機構を内蔵したソフトコンタクトレンズ型のエネルギー自立型の細胞治療システムの実現を目的としている。本年度は、(1)涙液のような低濃度グルコース溶液からの発電を可能にする、高出力密度のグルコース発電フィルムの作製、(2)バイオ発電による細胞治療の検討、(3)バイオ発電フィルムとコンタクトレンズの一体化を行った。 (1)高出力密度グルコース発電フィルムの開発 グルコースを酸化する酵素と単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を「ナノレベルで秩序立てて複合化」し、「涙液中からの高効率・高出力発電」を可能にした。具体的には、長さが1mmのSWCNTが16nmピッチで林状に並んだ構造体(厚さ12μmのフィルム)を用意し、そこへメディエータ高分子と酵素を順次導入する方法を確立した。結果として、電極フィルム内の酵素(約3兆個)利用効率100%(副反応なし)と、酵素の高密度充填による高出力を両立し、かつてないほどの高出力密度を可能にした。 (2)バイオ発電による細胞治療の検討 上記発電フィルムを用いて角膜上皮細胞の電気走性試験を行った。角膜の創傷部と通常部間に発生する電流を本フィルムで増幅することに成功し、その電流の強弱に細胞の遊走も呼応することが確認された。つまり、コンタクトレンズ上に本シートを形成することで、角膜の創傷を通常よりも早く治療できる可能性がある。 (3)バイオ発電フィルムとコンタクトレンズの一体化 光重合性のハイドロゲルを利用することで、コンタクトレンズ型ハイドロゲル内へ上記発電フィルムを閉じ込めることに成功した。発電フィルム内からのメディエータ等の流出を抑えられていると推測される。本コンタクトレンズ型デバイスを用いて、現在動物実験を進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度内で、(1)要素技術の確立、(2)デバイス化、(3)動物実験への移行が完了している。特に(1)の達成が重要であり、これによって(2)、(3)へと半年以内に移行することができた。したがって終了までに、(3)の過程をクリアし、成果を発表できると推察されるため上記の自己評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
現在ウサギを用いた動物実験を執り行っている。具体的にはウサギの角膜細胞表面の創傷治癒促進効果に本デバイスが適しているかどうかを確認している。培養細胞を用いた実験では、創傷治癒効果が確認されているため、比較的近いうちにウサギの角膜においても同様の効果が得られると考えている。もし、ウサギでの効果が確認できない場合、デバイス材料の細胞に対する悪影響を再評価、角膜表面への電流を効果的に付与できるような再設計行い、順次動物実験を行う次第である。
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