研究課題/領域番号 |
12J03768
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
平野 貴俊 東京芸術大学, 大学院・音楽研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 音楽学 / 放送 / 音楽政策 / 現代音楽 / 文化政策 / ラジオ / フランス / 20世紀 |
研究概要 |
本研究の目的は、フランス・ラジオ放送・テレビ公社Office de Radiodiffusion Television Francaise(ORTF)(運営期間1964-1974)が同時代に創作された音楽(現代音楽)を普及するために行った活動が、本期間中のフランスの音楽界に対して有した意義を明確化することにある。昨年度は、ORTFの行った現代音楽普及活動の実態を概ね把握した。また、ORTFにとりわけ関係の深い国家組織であるフランス文化省音楽課についても調査を行った。 1回目の海外調査では、フランス国立図書館およびラジオ・フランス資料部で、ORTF出版部の発行した機関誌を複数閲覧し、ORTFの主導した音楽活動の実態を詳細に把握した。調査の成果、1964年以前に比べてORTFがより積極的に現代音楽を演奏会に組み込むようになったことが明らかになった。フランス公文書館では、ORTFの前身RTFの現代音楽創作団体「実験クラブ」で作成された報告書等を閲覧した。調査を通して、ORTFの前身RTFによる現代音楽普及活動および番組制作過程を解明し、これらの活動がその後ORTFにおいてどのような意義をもちえたのかを考察した。 2回目の海外調査では、フランス公文書館において、1966年にアンドレ・マルロー文化相が設置した文化省音楽課の資料を閲覧した。また、現代音楽の分野で世界的に名高い研究所、パウル・ザッハー財団において、1960年代のフランスを代表する作曲家・指揮者ピエール・ブーレーズが、文化省音楽課長の人事をめぐってマルローと対立した際に交わした書簡を閲覧した。本渡航調査で得られた成果は、本年度中にまとめられたうえで公表される見通しである。ここでは、戦後フランスの音楽政策における、音楽の普及をめぐる当事者たちの考え方の対立を浮き彫りにすることができると考えられる。 本年度は、ORTFの音楽活動を支えた理念と実践の関係について、あるいは文化省とORTFとの関係について、より踏み込んだ形で研究を遂行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度の調査では、実施計画を立案した時点で存在を把握していなかった重要な資料を数点確認し、これらを閲覧することができたことにより、研究を大幅に進展させることができた。とりわけ、ORTFラジオ番組委員会議事録には、当時の音楽放送統括者の音楽放送に関わる理念が明確に表われており、今後の研究において主要資料となることが予測される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度には、第一に、フランス国営放送で音楽放送の統括を担った責任者の言説を検討する。この検証は、前年度に行った音楽活動の理念の調査の延長線上にある。第二の調査は、現代音楽作品を取り上げた音楽放送の実態調査である。具体的な調査対象としては、放送された曲目、扱われた作曲家の一覧にみられる傾向、時間枠およびその変遷、作品の解説、現代音楽を放送した2つのラジオチャンネル(フランス・キュルチュールとフランス・ミュジック)の間でどのような配分が行われていたか、である。これらの調査に必要な資料は、フランス国立図書館のイナテーク(研究者用の資料試聴ブース)に所蔵されている。
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