本研究課題は、プーチン政権下で奨励された「愛国主義」政策ならびに政権中枢によって設立された官製青年組織「ナーシ」の動向を検討することで、政権が求める「若者像」を浮き彫りにし、その上で青年層が政策に対していかなる「主体性」を発揮してきたのかを明らかにするものである。 平成25年度は、昨年同様にプーチン政権下で奨励された「愛国主義」政策ならびに官製青年組織「ナーシ」に関する文献(日本語、ロシア語、英語)を収集し、研究会や学会で成果を公表した。まず、ロシア・東欧学会で「プーチン体制下における政治動員――選挙マシーンとしての官製青年組織『ナーシ』」と題する報告を行い、組織内でいかなる教育が行われているのかを中心に明らかにした。特に、組織の設立以来、毎年行われているサマー・キャンプで政権派の学者が行った講義の内容を検討し、いかなる事柄が「ナーシ」のメンバーに教え込まれ、そして彼らが動員されたのかを考察した。研究報告を踏まえて、官製青年組織「ナーシ」に関する学術論文を公刊した。 また、九州を中心に運営組織されているソ連・東欧史研究会では、ソ連崩壊後のロシアにおいて「愛国主義」が実際の政策へと反映される過程を示した研究報告も行った。もっとも、当該報告に関しては、論文発表には至らなかったため、次年度以降に公刊する予定である。 なお、現在は博士論文の執筆に本格的に取り組んでいる。これまで行ってきた資料収集や研究の成果を踏まえ、博士論文を完成させることが当面の課題となる。
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