研究課題/領域番号 |
12J03817
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
丸山 大介 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | スーフィズム / タリーカ / イスラーム / スーダン / 倫理 / サラフィー主義 / 地域研究 |
研究概要 |
1)スーフィズムが有する理念と実践の乖離にするにかんする研究 2010年に行われた大統領選挙、2011年の南スーダンの分離独立を問う国民投票、2012年に発生したサラフィー主義者との衝突を事例に、スーダンのスーフィーたちが理念と現実の間で揺れ動く過程を明らかにした。寛容や平和を自らのアイデンティティとして意識し、それを公にアピールしているにもかかわらず、スーダンの政治的状況との関わりにおいては、イスラームと非イスラーム、さらには「真の」イスラームと「偽の」イスラームとを明確に選別し、自らを前者に位置付ける。すなわち、現実の主張では排他的な思想が強調されてしまっており、スーフィーが自身を取り巻く政治的・社会的状況の中で自己矛盾に陥ってしまっている状況を指摘した。 2)スーフィズムの倫理的側面にかんする研究先行研究 において現代スーフィズムが有する倫理的側面が強調されてきたものの、それに対する実証的な研究は少なかった。本研究ではスーダンの代表的なタリーカのひとつであるカーディリー・アラキー教団を事例に、スーフィズムの倫理的側面をタリーカにおける規律と結びつけて考察した。同教団の論理において、スーフィズムは個人を律する側面と、社会との関わりを規定する側面の二面性を有していた。前者は魂の浄化や倫理観の向上、イスラームへの専心を促す論理である。他方、同教団では、他者に対して愛や敬意を持つことや、謙虚に振る舞うことも重要視されていた。「同じ世界に生きている」という意識の下、相互扶助や相互尊重の精神、協調性に代表される社会性を培っていくことが、「人間学」とも形容されるス「フィズムには重要な要素なのである。このスーフィズムの二面性を結びつける上で、倫理と規律は必要不可欠な要素であると結論づけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書で言及したエジプトでの予備調査は治安上の問題で断念せざるを得なかったが、それ以外は予定通りの研究を実施した。とくにスーダンでの調査によって、従来対立関係にあると考えられてきたスーフィズムとサラフィー主義が思想的類似性を持ちうる点や、スーフィーがサラフィー主義者の排他的な論理を踏襲し自己矛盾に陥っている現状を明らかにした。上述の研究に基づいた2本の論文投稿(1件は英語)と3件の研究発表(1件は海外)を行っており、現在までの研究と成果発表は概ね順調に進んだと言える。
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今後の研究の推進方策 |
(抄録なし)
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