研究課題/領域番号 |
12J03846
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
斎藤 祥平 北海道大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ユーラシア主義 / ニコライトルベツコイ / ソ連 / ナチスドイツ / ロシア人亡命者 / 人種主義 / 一九三〇年代西洋史 |
研究概要 |
本年度は、特別研究員採用一年目の研究実地計画に従い、二本の論文(外国語、日本語)を執筆・刊行した。これは前年度、ワシントンおよび北京で行った学会報告と、オーストリア・ウィーンで史料調査、およびチェコ共和国への留学の成果である。外国語論文は、国際会議で使用した英語論文をロシア語に翻訳し、ドイツの学術雑誌(査読付き)で発表した。この雑誌にはドイツ人とロシア人を中心に、現地のウクライナ系学者など多様な筆者と読者がおり、過去10回ほど連載している「反ヨーロッパ思想」の特集号に論文を掲載することができたことも、自分の研究を幅広い文脈に位置づけるという点で意義が大きかったと言える。日本語論文は『ロシア史研究』に投稿し、採録が決定した。中東欧地域で発見した史料を用い、ユーラシア主義や言語学者ニコライ・トルベツコイの思想に関して新しい問題と議論を提示することを目指した。また、研究代表者はこれまで、ニコライ・トルベツコイの著作や書簡の分析に従事してきたが、この論文では、彼の民族や言語に関する思想が一九三〇年代以降どのように受容されたのかという点に注目した。具体的には、トルベツコイの著作にはしばしばロシア語版とドイツ語版が存在するが、それらを比較・分析し、ナチスドイツやソ連といったそれぞれ異なるイデオロギーの磁場の中で、トルベツコイの思想がどのように受容、変容、利用されたのかを考察した。これまで自分の研究とは異なる研究手法に挑戦し、研究スタイルの幅を拡げることができたのではないかと考えている。さらに、査読者と編集者に有益な批判と助言をいただいたことにより、審査と修正・編集の過程で論文の質を向上させることができた。その他、ロシアで在外研究を行い、史料収集と現地の研究者との交流を行った。ロシア語の論文を刊行していたため、自分の研究に対するフィードバックを効率的に得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究公表に関しては、外国語、日本語それぞれ一本ずつ論文を査読雑誌に発表することができた。史料収集に関しては、博士論文執筆に十分な史料を確保することができた。
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今後の研究の推進方策 |
自分の研究をより広い文脈に位置づけるため、国内のディシップリン系の学会で研究報告を行う。執筆した英語論文を刊行に向けて、雑誌に投稿する。博士論文の執筆を行う。
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