研究課題/領域番号 |
12J03862
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 嘉人 北海道大学, 電子科学研究所, 特別研究員(PD)
|
キーワード | 金属ナノ構造 / 光放射圧 / 光局在場 / 金ナノブロックペア / プラズモントラッピング / 局在プラズモン / ナノマニピュレーション |
研究概要 |
プラズモン光局在場でナノ粒子に働く放射圧を計算するMaxwell応力法プログラムを構築し、ナノブロックペアのブロックサイズ、ギャップサイズ、材質をパラメーターに放射圧ポテンシャルの計算を行い、実験で使用する波長1064nmのレーザー光照射によってナノ粒子を数ナノメートルの小さな位置揺らぎで長時間安定に捕捉するためのナノ構造を見いだした。最適化したナノ構造は、電子線ビームリソグラフィ/リフトオフ法によって作製し、SEMやAFMによって形状を、顕微分光によりプラズモン共鳴特性を、NSOMにより光局在場分布を評価し、シミュレーションで用いたモデルと極めて近い形状・特性の金ナノブロックペアを得る事ができた。 100nmナノ粒子の位置揺らぎ情報を元に捕捉ポテンシャルを求めたところ、入射強度が60kW/cm^2の場合、光バネ定数は金ナノブロックペアの短軸方向に沿ってkx:2.2[fN/nm]長軸方向に沿ってky:2.0[fN/nm]と得られた。ばね定数は短軸方向の方が長軸方向よりも大きくなっていることがわかり、この結果はMaxwell応力法によって得られた計算値と良い一致を示している。また、従来の集光レーザーを用いた光ピンセットではk=2.2×10-3[fN/nm]となり、プラズモントラッピングは従来の光ピンセットよりも約3桁強い力で捕捉できることがわかった。さらに、長軸偏光の光を照射した場合、単一のポテンシャル井戸が観察され、短軸偏光の光を照射した場合は、ポテンシャル井戸が二つに分離し、そのポテンシャル井戸間距離は回折限界以下である約230nmであった。この結果は、プラズモン局在場を用いる事によってナノ粒子を超解像で光トラッピングできることを証明する世界で初めての結果であり、従来の集光レーザーでは決して実現できない事からプラズモントラッピング特有の新しい応用への展開が期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、2年間で行うことを計画していた実験およびシミュレーションを1年間で遂行し、その内容を論文にまとめ、現在投稿中にある。さらに同時進行で、計画段階において困難としていた内容について新しい切り口を提案することができた。まだ系が最適化されていないもののこのアイデアについての理論シミュレーションを行い、Natureの姉妹紙であるScientific Reports紙でみごと論文が掲載されている。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は、今年度に提案した超解像プラズモントラッピングのさらなる分解能を目指すとともに、これまでは単に一点でナノ粒子を位置させるだけであったプラズモントラッピングをナノ空間マニピュレーションへと展開する。 また、プラズモン共鳴を励振する際に生じる局所温度上昇は熱対流の原因となり粒子捕捉を妨げる結果となる。そこで、金属ナノ構造を熱伝導性の高い基板に作製するによって、その基板をヒートシンクとして用いることを検討している。
|