研究課題/領域番号 |
12J03884
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
村上 しほり 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員DC2
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キーワード | 戦災復興 / 占領期 / 露店 / 闇市 / 駅前再開発 / 不法占拠 / GHQ / 都市史 |
研究概要 |
本年度は、神戸市内において戦後の中心市街地となった三宮地区の戦災復興初期過程から、近現代神戸のあゆみのなかに戦災復興期の都市形成のダイナミズムを位置づけることを目指し、復興初期の民衆の都市生活の実態や、行政の都市再建への営為やその関係性に着目して、調査・分析を進めた。 文献史料の調査として、『神戸新聞』悉皆調査を継続的に行い、県報や市会・県会議事録や地域史料等の調査を行なうとともに、土地台帳と公図の調査・整理による近代市街地形成の分析から、当該地域における新興市場形成の社会的背景を明らかにした。さらに、1945年から1949年にかけての占領軍検閲体制下で発行された雑誌・図書と検閲資料を所蔵するメリーランド大学のゴードン・プランゲ文庫の調査を行なったほか、米国ワシントン州に位置する米国公文書館所蔵の日本占領関係資料の調査を行い、マイクロフィルム化され国立国会図書館に所蔵されていないフォルダーの特定や、視覚資料(地図・映像・写真)の収集に努めた。最終年度である来年度には、博士論文執筆と並行してその成果を発表できるよう、これらの収集史料の整理分析を早急に進めるものとする。 前述した史料と地域住民へのインタビュー調査とを総合して、戦災都市神戸の戦後を象徴的に示す三宮東地区に関する論文を発表した。ヤミ市の形成・変容過程に関する研究を進めるなかで浮かび上がった問題領域として、その整理・移転後に形成された新興市場の変容過程と都市整備への影響が明らかになった。また、明治期に行われた湊川の付替えによって形成された湊川新開地の昭和初期までの盛り場としての繁栄と戦後の衰退について、三宮地区との関係の推移から考察を進めたほか、鉄道高架下の店舗形成経緯を実証的に明らかにする論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
米公文書館とプランゲ文庫の原資料にあたる調査や当該期の県・市公文書や地域史料等の充実した文献史料の調査を進めることができた。これは、戦災復興過程における都市の変容過程を明らかにするうえで重要な成果であり、今後の研究を遂行するにあたり確かな足がかりとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の調査によって得られた文献史料(GHQ/SCAP文書、県庁文書)の整理、インタビュー調査の文字化と分析を進める。そして、これまでの種々行なってきた調査による文献史料・視覚資料・土地関連行政文書・フィールドワーク等の成果を踏まえて、総合的に神戸市の戦災復興過程における都市形成の実態を描きだす。戦災復興初期における都市の暮らしの急速な変化の影響で、戦後神戸の中心市街地や周縁的地域形成の基盤が生み出されていくダイナミズムについて考察する。また、最終年度の成果として、三宮地区で計画・実施した地域住民が戦後を語る座談会の記録を報告書としてまとめる。
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